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東大最年少准教授が語る、日本が「失われた30年」に陥った理由

2019年11月09日 公開

大澤昇平(東京大学大学院情報学環特任准教授)

大澤昇平写真:吉田和本 聞き手:編集部(中西史也)

わが国はなぜ、近年イノベーションが起こせず、「失われた30年」に陥ってしまったのか。東京大学大学院情報学環特任准教授の大澤昇平氏は、日本衰退の根底には「大学受験のジレンマ」があるという。東大最年少准教授が語る、日本再生への道とは。

本稿は『Voice』(2019年12月号)、「著者に聞く」、大澤昇平氏の『AI救国論』を一部抜粋、編集したものです。

 

敗因は「大学受験のジレンマ」

――日本が平成でイノベーションを起こせず、「失われた30年」に陥ってしまった要因として、年功序列に象徴される日本型雇用の弊害がよく指摘されます。しかし本書で大澤さんは、別の見方をしていますね。

【大澤】 日本はこの30年で何を失ったのか。それは、戦後からバブル崩壊にかけて享受してきた経済成長です。高度経済成長期には毎年二桁台で伸びてきた経済成長の勢いは、いまや完全に陰りをみせている。

では、なぜ世界のなかで日本だけが取り残されつつあるのか。はっきりいえば、ITの技術で出遅れたからです。

1995年にマイクロソフトが「Windows 95」を発売して以降、ITが世界を席巻していったこの期間は、平成の歩みとほとんど重なります。

――往時は「技術立国」とまで呼ばれた日本が、なぜIT化では後れをとったのでしょうか。

【大澤】 端的にいえば、IT技術をキャッチアップする若手を育成できなかった教育の失敗が問題の根源だと思います。

日本の学校教育は「モノ」を学習するうえでは非常に合理的にできています。中学・高校で物理や化学、生物を勉強しましたよね? 

そこで習う「質量保存の法則」といった知識は、基本的に「モノ」に関わることです。日本が自動車や電化製品を中心としたモノづくりに長けているのも、まさに教育の成果といえます。

ところが、世界でIT化の波が広がっていたのにもかかわらず、日本の教育は相変わらず「モノ」の学習にとどまっていた。

デジタルの教育に本気で取り組まなかったのです。私はこの構造を「大学受験のジレンマ」と呼んでいます。

――大学受験のために学ぶ内容が、デジタル社会では役に立たない?

【大澤】 事実、目に見えない無形資産が資産全体に占める割合は、アメリカが26%なのに対し、日本はいまだ6・4%にすぎません。

GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が世界で圧倒的存在感を示し、無形資産やデータの重要度が増すなか、日本は「IT鎖国」状態に陥っているといえます。

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