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イノベーションの源泉となる「水平思考」のすすめ

2019年11月11日 公開

大澤昇平(東京大学大学院情報学環特任准教授)

大澤昇平写真:吉田和本 聞き手:編集部(中西史也)

ビジネススキルの一環として、ロジカルシンキングの重要性がしばしば説かれる。しかし、東京大学大学院情報学環特任准教授の大澤昇平氏は、ロジカルシンキングには限界があるとし、その代わりにラテラルシンキング(水平思考)を推奨する。イノベーションの源となる思考法について語る。

本稿は『Voice』(2019年12月号)、「著者に聞く」、大澤昇平氏の『AI救国論』を一部抜粋、編集したものです。

 

水平思考を身に付けよ

――2020年からプログラミング教育が小学校で必修化されます。この施策をどう評価しますか。

【大澤】 大きな方向性としては肯定的にみています。やっと動いたか、という印象は否めませんが、プログラミングを教育に取り入れる試みはきわめて合理的です。

「扱うプログラミング言語が古い」といった批判はあるものの、まずは導入してみて、中身は適宜、改善していけばいいと思います。

――学校教育で「ロジカルシンキング(論理的思考)」を教えるべきとの声も聞かれるなか、大澤さんは「ラテラルシンキング(水平思考)」の重要性を説いていますね。

【大澤】 水平思考とはすなわち「意外な解を発見する思考法」であり、イノベーションの源泉です。

一方のロジカルシンキングは「垂直思考」とも呼ばれ、前提から結論まで一本で筋は通っていますが、何か新しい発見をすることには向いていません。それを補完するのが水平思考で、定説を疑う発想ともいえます。

たとえば「書店の集客を伸ばす」というゴールを設定した場合、かつては良い立地に店を構えるのが常識でした。そのため、好立地の店舗を押さえられない後発のプレイヤーは失敗する、と考えられていた。

そのなかで、「人が集まる場所なら集客はどこでもよい」という発想に基づき、インターネットによる販売を行なったのがアマゾンです。

オンラインによる買い物が可能である事実を見つけたことで、後発のプレイヤーでも成功できるという新説を生み出しました。この例はまさに、水平思考の賜物といえるでしょう。

――アマゾンがオンライン販売を始めた当初は、「本の内容は店頭で確かめてみなければわからないから、ネットで買う人はそんなに増えない」という見方もありました。

【大澤】 それは定説にとらわれた考えで、事実から目を背けていた、といわざるをえません。人が自らの常識と矛盾する事象に不快感を覚えることを心理学用語で「認知的不協和」といいます。

人間は感情がある生き物なので、事実を正面から捉えられないことがある。認知的不協和に嵌らないためには、定説よりも事実に立脚する水平思考を日ごろから意識し、訓練する必要があります。

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