Voice » 政治・外交 » 「文政権の南北統一論は幻想」 前統合幕僚長と国際政治学者が指摘

「文政権の南北統一論は幻想」 前統合幕僚長と国際政治学者が指摘

2019年11月12日 公開
2022年07月08日 更新

河野克俊(第五代統合幕僚長)&村田晃嗣(同志社大学法学部教授)

GSOMIA破棄が北朝鮮に与えるメッセージ

河野克俊

【河野】 韓国の大きな変化は、冷戦構造が崩れたことも影響しています。現在の韓国は安全保障面でアメリカがサポートし、北朝鮮はソ連の後ろ盾で誕生しました。

在韓米軍は休戦協定を前提に存在しています。まさに朝鮮戦争の残滓のような存在です。もし終戦協定が締結されて南北の軍事境界線がなくなれば、理屈としては、韓国が望まない限り米軍は撤収する可能性があります。

同じ民族・言語の南北朝鮮が統一に向かう力学が働くのは当然ともいえますが、文政権ほど北朝鮮に近づいた政権は過去にありません。

日本にとって最悪のシナリオは、統一が北朝鮮の主導によってなされ、核を保有した反日半島国家ができることです。もしそうなれば、日本は防衛戦略を大きく変える必要があります。

【村田】 韓国によるGSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄についてはどうみていますか。

【河野】 自動更新するだろうと想定していました。いくら韓国が日本に対して歴史問題で主張し続けても、GSOMIAに関しては合理的に判断するだろうと考えていました。

同協定は日米韓の3カ国による対北朝鮮の枠組みであり、アメリカのエスパー国防長官は韓国に対して、協定を破棄しないよう働きかけていた。

一方で北朝鮮は協定破棄を求めていましたから、今回の措置が北朝鮮に誤ったメッセージを与えてしまったのではないかと危惧しています。

次のページ
反日と南北統一論は両立しない >

Voice 購入

2024年5月号

Voice 2024年5月号

発売日:2024年04月06日
価格(税込):880円

関連記事

編集部のおすすめ

在韓米軍撤退の悪夢 対馬海峡が軍事境界線に?

村田晃嗣(同志社大学法学部教授)

国際法の日本vs歴史認識の韓国、相容れない対立の本質とは

篠田英朗(東京外国語大学教授)
×