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文政権が引き起こした反乱 韓国の新聞社で勃発した「記事削除事件」

2019年11月22日 公開

下川正晴(著述業・元毎日新聞ソウル支局長)

 

「新たな権力層」となった50代の醜態

声明に「新積弊」という新造語がある。現代韓国語辞典で「積弊」とは軍事政権時代からの権力層のことを指す。「積弊清算」が文政権の政策だ。

若手記者たちは編集幹部たちを「新しい積弊」と指弾(しだん)しているのだ。「(『ハンギョレ』は)50代の男性による、50代の男性のための新聞をつくって、読者から『絶読』される事態になっている」。既成世代への批判が明確に表現されていた。

「新積弊」とは何か。『ハンギョレ』をめぐる二つの政府人事が思い当たる。社会部長、論説委員を歴任した金宜謙(キムウィギョム)氏 (56)は大統領スポークスマンに就任した。論説委員室長だった呉泰奎(オテギュ)氏(59)は昨年4月、駐大阪総領事に抜擢された。

前者は在任中、官舎に住みながら投機目的で高額のビルを購入した疑惑が浮上し、今年3月に辞任した。後者は文政権で「日韓慰安婦合意」の検証部会委員長を務め、「裏合意があった」と批判した人物である。

保守政権では保守紙との癒着が頻繁にみられたが、文政権でも進歩派記者との共犯関係が明白である。

今回注目されたのは、曺国氏と同世代の「86世代」(1960年代生まれの50代)の変貌ぶりである。1980年代の民主化を学生時代に経験した世代だが、いまや社会上層部を占める時代になった。

彼らは保守政権時代と変わらぬ旧態依然の醜態を繰り返した。

その現状を韓相震(ハンサンジン)氏(74)は、保守紙『中央日報』で「ミイラ取りがミイラになった」と酷評した。

ソウル大名誉教授で、1980年代の民主化闘争当時は政治的に疎外された中間層が立ち上がった意義を強調した論評を発表し、マスコミ論調に大きな影響を与えた社会学者である。

今回の事態に際して彼は「進歩派が困惑した状況に陥ったったのは、新しい時代の潮流に逆行したからだ」と論評し、曺国退陣を求める大学教授4000人の時局宣言に参加した。明らかに韓国社会のトレンドが変わってきたことを窺わせる言動だ。

『ハンギョレ』社内の確執は根深いものがあるようだ。社内の混乱が一段落したあとも、『ハンギョレ』OBが反乱事件の発端となった司法記者を非難し、その記者から名誉毀損で告訴された。

同紙は曺国法相辞任の直前、尹錫悦(ユンソンヨル)検事総長が「建設業者の別荘で接待を受けた」と報じたものの、信憑性に乏しく他社から失笑を買った。読者からの抗議が殺到し、労組は10月24日、首脳陣の奮起を要求した。



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