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習近平が世界地図の上に引いた“2本の線”の意味

2019年12月04日 公開
2022年11月02日 更新

日高義樹(ハドソン研究所首席研究員)

あまりにレベルが劣る中国の空母

そのうえ、変わりやすい太平洋の天候や海の状況、潜水艦による攻撃などを考慮に入れれば、地図の上に1本線を引いただけの防衛ラインなど無意味である。

中国の習近平はじめ指導者が、地図の上に一本の線を描き、空母や艦艇の数を揃えれば、シーレーンの確保が可能だと考えているとすれば、現実を理解していない。

極端なことを言うと中国は、空母機動艦隊を守るための対潜水艦作戦の能力をまったく持っていない。最新鋭の機材を持っているにしろ、その機材を使うノウハウ、早い話がソナーの音を聞き分ける能力すら十分に持っているとは考えられないのである。

もう1つ重要な問題は、中国の海軍力増強の中心になっている空母の能力が世界のレベルと比べるとあまりにも劣っていることである。

中国はソビエトが使っていた50年前の古い空母を改造し「遼寧」と命名して、第一線空母にしているほか、国産の新しい空母501Aを実戦配備した。

この501Aを10隻つくりたいとしているが、アメリカ軍の情報によると、501Aも古いロシアの空母も、最新鋭のステルス型戦闘機を離発着させるのが難しい。つまり、能力のうえで欠点だらけなのである。

そのうえ中国がつくろうとしている新しい空母は、アメリカの第一線原子力空母ニミッツ型のほぼ半分の大きさしかない。

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