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「訪日韓国人が激減」でも、まったく心配いらないワケ

2019年12月16日 公開
2022年10月27日 更新

渡邉哲也(経済評論家)

 

訪日外国人の人数偏重主義から脱却せよ

そもそも日本の観光産業における最大の問題は、中国と韓国の観光客に依存しすぎている点にある。

前述の通り、中国人観光客の消費力は魅力的だが、経済面で不安要素があり、その数がいつ減少するかわからない。企業数、路線及び便数に係る制限を二国間で相互に撤廃する「オープンスカイ協定」を中国・韓国以外にも広げ、広範な地域にシフトさせていく必要があるだろう。

国土交通省が発表しているオープンスカイ協定は、33か国(2017年9月現在)。決して少ないとは言わないが、さらなるインバウンドの活性化のために、アジア・ゲートウェイ構想(アジア各国と積極的に交流を図り、日本の役割や地位を高めようとする構想)。をもう一段進めるかたちで、観光客の多様化を図っていく必要がある。

骨太の方針などでも、かつては人数ベースであったインバウンド誘致の目標を金額ベースに切り替えていかなければならない。

改めて強調すべきは、「訪日観光客がいくら使ってくれるか」である。人数を増やすことばかりに気をとられていると、金を使わない観光客が溢れ「観光公害」が増える一方だ。国の指針も、客単価を上げていく方向にシフトしていくべきだろう。

インバウンドは日本の重要な産業になりつつあるが、それでも日本が「観光立国化」するとは思えない。年間3000万人を超える訪日観光客があっても、GDP比では3%程度にすぎない。観光に頼っている経済状況でなければ、わざわざ観光立国にする必要もなく、国や街に魅力があれば自ずと観光客はやって来る。

それならば、アクセスが良く、観光客が楽しめる環境を作るのが先決だ。人が多過ぎて、まともに観光地を回れないような状況を作るのは中長期的戦略としてはマイナスでしかない。そう考えると、現在のインバウンド政策は間違っていると言わざるをえない。

 

東京は世界一物価の安い都市

日本の魅力の一つが「食事」である。いま、世界で最も物価が安い都市が東京だ。つまり、「安くて、うまい」が東京のキラーコンテンツとなっている。

ロンドンで普通のレストランでランチを食べれば、最低1人5000円は必要になる。

ところが日本はランチなら1000円もあれば十分食べられる。少し贅沢しても、3000~4000円でホテルのバイキングが楽しめる。

吉野家に行けば牛丼1杯387円(税込)だ。また、コンビニエンスストアなら海苔弁当が398円で売っているし、女性向けのミニサイズなら300円を切る。

世界の大都市圏で、ここまで物価が安いところは東京以外にはない。生活環境として治安が良く、物価が安い。夏場の猛烈な暑さを除けば、生活環境としてこれほど快適な街は世界を探しても見つけることができない。

安全な食品が安定的に供給され、医療水準も高い。いま、白人の観光客、とくにヨーロッパのロングステイ客が増えているのは、そういう社会資本の充実が根底にあると考えていい。「1カ月休みをとって日本で普通に外食しても、ヨーロッパに滞在するより安いなら、一度行ってみよう」となる。

そのためバックパッカーを中心に民泊のような1泊3000円程度の施設に宿泊する観光パターンも出てきている。白人たちのバックパッカー、旅行客に日本で言う簡易宿舎が大人気になり、ガイドブックにも載っている。世界中に"オタク"が存在し、彼らにとっての聖地・秋葉原をはじめとした観光資源もある。

そうした情勢を考えると、訪日客はこの先、落ちることは考えにくい。すでにピークに近くなっている中国と韓国は落ちるが、アジアのほかの国々も少しずつ豊かになり、富裕層が日本に来るようになるだろう。

したがって、繰り返しになるが、観光客数を追い求めるインバウンド政策は即刻、改めるべきである。

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