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血なまぐさい現場から出てくる思想

2020年01月06日 公開

菅野覚明(皇學館大學特別招聘教授、東京大学名誉教授)

菅野覚明(皇學館大學特別招聘教授、東京大学名誉教授)※写真はイメージです。

巷間(こうかん)、多くの武士道の書物や、あるいは武士に関する小説が出回っています。しかし、現代人が書いた武士道に関する書物の多くは、実際に武士が語った原典をほとんど読まぬまま書かれているようです。そこから武士の生き方を思い描いてしまうと、武士の実像を大きく見誤ることになります。

では、実際に現場で刀を振るって血まみれになり、武士として生き抜いてきた人々が形づくった「現場の感覚から出た思想」、すなわち、本当の武士道とはどういうものであるか。武士たちは最終的に守ろうとした「道徳」とは何なのでしょうか。

※本稿は菅野覚明著『本当の武士道とは何か 日本人の理想と倫理』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。

 

武士の定義

「武士道」という言葉は、わかったような、わからないような言葉です。

この言葉は、分解すると「武士」という言葉と「道」という言葉の二つからできています。ですから、武士道とは何かと問うならば、「武士とは何であるか」「道とは何であるか」の二つのことがわからなければなりません。

この二つのうち、「武士」のほうは割合とイメージしやすいはずです。なにしろ昔、現実に存在していた人たちなのですから。

ひと言でいうなら、日本の伝統的な戦闘者、戦う者が武士です。「武士」というものを、まじめに定義しようとすると、ずいぶんとややこしい話になりますが、とにかく「戦闘する」という要素がなければ武士とはいえないことは間違いありません。

ただし、武士は戦闘者ではあるものの、単に戦闘技術を売る用心棒や、根無し草の山賊のような戦闘者とは、性格を異にします。

武士は「戦う生活者」です。決まった土地に住み、妻子や家族や、場合によっては郎党(従者)や領民を抱え、逃げも隠れもできない。一族郎党や領民の生活を守るために、日頃から「武」を磨き、戦うことによって自分の人生を生きていく。

時として、自分より勢力が強い有力者に従うことで一族郎党を守ることもありますが、その場合には自分が仕えた主君のために戦い、その働きに応じて恩賞をもらうことで生きていく。それが一番簡単な武士の定義でしょう。

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