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虐待やいじめがなぜ起こるのか

2020年01月08日 公開

菅野覚明(皇學館大學特別招聘教授、東京大学名誉教授)

菅野覚明(皇學館大學特別招聘教授、東京大学名誉教授)※写真はイメージです。

われわれが生きている現代は、どういう時代でしょうか。いろいろな説明の仕方ができるでしょう。ただ、「武士道」というテーマに沿って考えるならば、端的に「強さというものが見失われている時代」だといえるのではないでしょうか。

よく、日本の政治や外交について「平和ボケ」という言葉が用いられますが、要するに現代日本は、あらゆる面において「強さというものの値打ち」を見失っているように思えてなりません。

※本稿は菅野覚明著『本当の武士道とは何か 日本人の理想と倫理』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。

 

カッとなってしまう理由

現代日本では、いじめや児童虐待がしばしば問題になります。なぜ、小さい子供を虐待したり、弱い者をいじめたりすることが起こるのか。もちろん、いろいろな原因があるのでしょう。しかし、直感的にいえるのは、いじめたり虐待したりする人は「強さが足りない」のです。

たとえば、赤ん坊が夜泣きをして眠れない。そのようなことは、昔からよくあることです。しかし、そのくらいのことで若い親が子供を殴ったりするのは、要するに辛抱が足りないのです。

小さい子供の親になるくらいの年齢の若い大人だったら、普通は少しぐらい眠れなくても、翌日、頑張って仕事をこなすことでしょう(実際、そういう人が大多数であるはずです)。

子供に手を上げてしまうような人は、「ついついカッとなってしまって」と、言い訳をいうかもしれません。

しかし、「三日くらい睡眠不足になっても、身体も精神もビクともしない」というくらいの人であれば、愛するわが子が少しばかりぐずついたところで、カッとなるどころか、まったく余裕の表情を浮かべられるはずです。

野球の試合でもそうでしょう。実力も精神力も兼ね備えた投手であれば、少しくらい仲間の野手がエラーをしても動じず、むしろ、だからこそ相手の打者を自分の力で討ち取ってやるという気魄で向かっていき、良い結果を残せる。

しかし、そのような実力や自信がない投手は、ついついカッとしてエラーをした野手を責めたり、頭に血が上ってバランスを崩したりして、相手打線に打ち込まれてしまったりする。そして試合後の反省会では「あいつがエラーをしたから」などと責任転嫁さえするかもしれません。

つまり、カッとなってしまうというのは、その人の身体や精神が、ちょっとしたことに持ちこたえられないくらい弱いということです。我慢ができないというのは、つまり強さがないということなのです。

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