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人間の一人ひとりに尊厳がある――外国人労働者と向き合う孤独な蕎麦職人。藤竜也インタビュー

2020年01月15日 公開
2020年01月17日 更新

藤竜也(俳優)

幸せや生きづらさを感じとってほしい

藤竜也蕎麦職人の弘(右、藤竜也さん)と中国人の青年リャン(ルー・ユーライさん)©2018 CREATPS / Mystigri Pictures

――長年の俳優人生で数多の役を演じてきた藤さんですが、役者としてこれだけは大事にしているというモットーはありますか。

【藤】 遅刻しないこと、クランクアップまで病気をせずに撮影を全うすること。これに尽きますよ(笑)。

――演技についていえば、藤さんは日頃から「役者の演技に上手いも下手もない」と発言していますね。

【藤】 どんな演技であろうと、それが一人ひとりの自我です。映画では、監督が自分の作品を最高にするためにキャスティングします。だからどんなタイプの俳優でも、その映画に必要とされている人物であり、演技なんですよ。

何が立派な演技で何が下手なのかを言うのは、僕はおこがましいと思う。役者は「これが俺のスタイルだ」って開き直ればいい。

――藤さんのように、年を重ねてもカッコよく生きるコツはあるのでしょうか。

【藤】 それは、僕自身がカッコいいということを言いたいわけですよね?

――はい。

【藤】 それはたぶん、間違っていると思うな。

――どういうことでしょうか?

【藤】 僕は自分のことをカッコいいとは思わないし、世界にいる約75億人のうちの一つの自我だと思っています。

世界を見渡せば、75億人それぞれの尊厳が存在する。自分は偉大だと勘違いしながら生きている人もいれば、傷つきもがいている人もいるし、小さな幸せを楽しんでいる人もいる。

そうして、いろいろな人間が自分以外に何十億人もいることを想像すると、自分がものすごく小さな存在に思えませんか?

――藤さんほどの名優がそう考えているとは意外でした。

【藤】 僕も一人の人間にすぎませんよ。いまでも、「こんなところで俺は潰れちゃっていいのか」と思うことはあります。葛藤を抱えている一人ひとりが何十億人もいると考えると、ゾクゾクするよね。

まさにこの映画も、そういった一人の人間の生き方に光を当てた作品です。

異国の地からやってきた青年と孤独な蕎麦職人、それぞれが抱える幸せや生きづらさを感じとってもらえたらと思います。

藤竜也

『コンプリシティ/優しい共犯』
2020年1月17日(金)より新宿武蔵野館にてロードショー
©2018 CREATPS / Mystigri Pictures

■スタッフ&キャスト
ルー・ユーライ 藤竜也 赤坂沙世 松本紀保 バオ・リンユ シェ・リ ヨン・ジョン 塚原大助 浜谷康幸 石田佳央 堺小春 / 占部房子
監督・脚本・編集:近浦啓
主題歌:テレサ・テン「我只在乎ニィ(時の流れに身をまかせ)」(ユニバーサル ミュージック/USMジャパン)
製作:クレイテプス Mystigri Pictures 制作プロダクション:クレイテプス 配給:クロックワークス 
2018/カラー/日本=中国/5.1ch/アメリカン・ビスタ/116分 

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