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アメリカの分断を狙う!? 暗躍するロシア「戦略的テレビ局」



2020年01月17日 公開

石澤靖治(学習院女子大学教授)

 

RTが影響を与えた、2016年米大統領選

RTとスプートニクは、2016年に共和党トランプと民主党ヒラリー・クリントンが争った米大統領選で、その存在の大きさをアメリカに大きく知らしめることになる。その際には反クリントンのトランプ陣営が、ネットで加担して連動するという動きにも至った。

具体的には次のようなものである。

トランプとクリントンの一騎打ちの戦いになる9月初旬のレイバーデー以降の選挙戦終盤に、RTがクリントンの健康不安説をテレビで報じた。

するとトランプを強く支持し、その後にトランプ政権の首席戦略官兼上級顧問となるスティーブ・バノンが会長を務める超タカ派サイト「ブライトバートニュース」が、それを追って報じる。

また陰謀論を主張する論者として知られるアレックス・ジョーンズのサイト「インフォウォーズ」も、同じ行動を取る。そしてやはりトランプ支持メディアのフォックスニュースが、そのことをテレビで報道する。

するとこうした動きの火付け役になったRTが、これら米メディアの一連の動きを「アメリカでクリントンへの健康不安の動きが広がっている」「クリントンは何らかの発作を起こしているようだ」として再び報じる。

こうしてさらにクリントンの健康不安の噂が広がるなかで、フォックスニュースでとくにトランプを支持するキャスターのショーン・ハニティーが、自らの番組で出演しているコメンテーターを誘導。

「クリントンの脳震盪の後遺症が深刻らしい」と言わせたのである。さらに、この間にSNSで情報が一斉に広まった。ロシアのRTとトランプ支持の米メディアとの事実上の共同プレーであった。

最終的にクリントンの健康不安説はまったくの噓であると判明するのだが、RTが起点となった偽情報拡散のプロセスで、被害者は紛れもなくクリントン。だが逆に「彼女はつねに何か隠しごとをする人物ではないのか」というイメージが残ったと言われている。

 

RTは米国の分裂を狙う

2016年のこの米大統領選では、ロシアの関与とトランプ陣営との関係が選挙戦中もその後も大きく言及された。

米国人を装ったロシア人がフェイスブックなどにアカウントを多数作成して、偽物の情報を織り交ぜながら選挙についてのアメリカの言論空間をより過激なものにし、かつ社会の分裂をより大きくなるような運動を行ったことなども明らかになった。

さらに2019年になって、米クレムソン大学の調査でわかったこともある。

それは民主党の予備選でクリントンに惜敗したサンダースだが、その後サンダース支持派のグループの名を語って「サンダースの考えはトランプと共有できるところがある。本選挙ではトランプに投票しよう」というツィートがあった。

だがそれは、トランプを当選させようとするロシアが発信元だったというのである。

これらにどこまでRTとスプートニクが関与し、どこまで関与していなかったのかはわからない。

ただ、入口としてRTとスプートニクがあり、そこからSNSなどを通じて国家の指導者を決める米大統領選挙が大きく揺さぶられたのは確かなことなのである。



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