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磁気ネックレスを高額販売…中国人観光ツアーの恐ろしい実態

2020年01月29日 公開
2023年04月17日 更新

西谷格(ノンフィクションライター)

 

車内で飛び出た「小日本(シャオリーベン)」

朝の皇居、二重橋前広場の喫煙所で張さんを見つけた。この日は、珍しくシャツにジャケットを羽織っている。

「第一印象が大事なんですヨ。次はもっとラフで構わないですけどね」

着ていたシャツは青色。それを見て、白シャツは中国ではあまり好まれないことを思い出した。中国人には「白無地=寂しい」という感覚があり、派手な色柄を好む傾向が強い。

皇居前にいるのはほとんど外国人観光客、それもやはり中国人が目立つ。そのへんをブラブラ歩き、スマホ片手に何枚も記念写真を撮っている。

東京在住の私には何が楽しいのかよく分からないが、そういえば私も昔ロンドンに行ったときは、バッキンガム宮殿を見に行った。観光地というのは、地元の人はあまり近寄らないものなのだ。

30分ほど散策して、張さん率いる一行は観光バスに乗り込んだ。私も一行の後に続いて乗り込み、後部座席に同乗した。

車両が動き始めると、張さんは前の方に立ってマイクを握り、ニッコリとわざとらしいほどの笑みを浮かべて語り始めた。

「みなさん、こんにちは。東京観光1日目です。さて、日本の国土は中国の26分の1、非常に小さい。だから小日本っていうんですよねえ!」

張さんの口から小日本(シャオリーベン)の三文字がこぼれ落ちるのを聞き、ギョッとした。日本滞在歴14年の張さんが日本に対する嫌悪を抱いているとは思えないし、歴史問題などハナから興味などないはず。

大陸からはるばる異郷の地にやってきた彼らに「私も同じ中国人ですよ!」という安心感を与えるための、一種のリップサービスなのだろう。乗客たちは特に盛り上がるでもなく、「小日本」のくだりは自然に流されていた。

 

やっぱり中国人には中華料理が一番?

一行は浅草寺を観光した後、中級ビジネスホテル内のレストランで昼食を取った。ガイドは乗客たちとは食事を共にしないという業界ルールがあるため、私と張さん、そして中国から同行していたガイドの3人は、厨房内の一角でランチを頂いた。

トレーの真ん中に納豆が鎮座し、その周りに五目煮、アジフライ、ミニハンバーグ、豚の角煮、味噌汁、ごはん茶碗が置かれていた。

アジフライとミニハンバーグは一見して冷凍と分かるもので、五目煮はしょっぱいだけ。缶詰だろう。豚の角煮だけが突出して本格的な味わいで、まろやかな仕上がりにご飯が進んだ。

八角の香りを効かせた本場の味だ。帰り際にキッチンにいたコックたちに挨拶すると全員中国人だったので、それもそのはずだ。

しかし来日していきなり納豆というのは、ハードルが高くないか。「日本食って美味しくないね。やっぱり中華が一番」と客たちが不満をこぼしている姿が目に浮かぶようだった。

店を出る際に客のテーブルを眺めると、やはり大半は角煮だけ完食し、納豆や五目煮はほとんど食べずに残していた。

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