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「野球界でいう大谷翔平が必要」 ラグビー日本代表「陰の立役者」が語る

2020年02月15日 公開
2022年02月07日 更新

藤井雄一郎(男子15人制ラグビー日本代表強化委員長)

これからの4年間と日本のラグビー改革

――次のW杯は2023年のフランス大会です。日本ラグビーをさらに強化する方法はありますか。

【藤井】これまでどおり勝利を最優先に考えながら、選手及び日本のラグビーの地盤をいかに強くするか、そのためのシステムづくりをしたいと考えています。

たとえば、今大会ではパナソニックが長期間にわたり何人もの主力選手を代表チームに派遣してくれた。これは日本に限らない課題ですが、代表選手の所属チームに「恩返し」できるような仕組みが、今後は必要になります。

――ジョセフHCに続投を求めたのはなぜでしょうか。前回大会後はエディー・ジョーンズ HCからジョセフHCに変わり、チームは新たな戦い方を身につけました。

【藤井】少なくとも私には、ジェイミーを変える理由は一つも見当たりませんでした。今大会、チームはじつに上手くまわったし、そもそもジェイミーは、W杯後にあのオールブラックスが「欲しい」と手を挙げたHCですよ。HCの交代により、チームに空白の時間をつくることも私には得策とは思えません。

――日本のラグビーは社会人チームによるトップリーグがありますが、W杯後、清宮克幸日本ラグビーフットボール協会副会長は「プロ化をなるべく早く実現したい」と発言されています。藤井さんはどうお考えですか。

【藤井】もちろん必要不可欠です。同時にもう一つ思うのは、いまの選手たちの多くは企業の社員として働いていて、それが日本ラグビー独特の「空気」をつくった側面もある。その良さは消したくありません。

いまトップリーグは自立してきているので、それとは別に海外に挑戦できるようなチームを2、3チームでもつくることができれば面白いでしょう。さらに検討すべき課題は、そこにどう育成システムを絡ませるかです。

いまの日本の状況では、高校からすぐにプロになりたいと思ってもなかなかなれない。高校日本代表に選ばれた選手のうち、何人が日本代表になっていると思いますか。

じつは、10年で数人しかいません。かつてジェイミーがニュージーランド高校代表として来日した際のメンバーは、1人を除いて全員オールブラックスでプレーした。この違いはとても大きいですよ。

20歳前後が選手としてもっとも伸びる時期でもあり、日本のラグビー界としてどこに資金を投じるのか、育成システムをしっかりと再構築しなければなりません。

――未来の日本代表をいかに育てるかが課題だと。

【藤井】いまのシステムのままだと、高校日本代表で箔をつけて、早稲田や帝京などの強豪大学に行き、その後にトップリーグでプレーをして、ようやく日本代表に選出されるころには20代半ばです。

一方で今大会のフランス代表のSO(スタンドオフ)は20歳ですから、次の大会に出てもまだ24歳。日本のシステムでは、そのような選手は出てこない。それではダメで、野球界でいうところの大谷翔平が出てくる仕組みが必要です。

ニュージーランドでは、ラグビーだけではなく、クリケットなどさまざまなスポーツをしながら、自分に合うスポーツを選びます。今大会でラグビーに興味をもってくれた子どもたちにも、選択肢の一つとしてラグビーを提案できる体制をつくっていきたいですね。

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