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2020年米大統領選、問われるのは「トランプ外交」の成果だ

2020年02月17日 公開

杉田弘毅(共同通信特別編集委員)

杉田弘毅※画像はイメージです。

2020年米大統領選、その争点となるのは「外交」であるとの見方が強い。

トランプ大統領は北朝鮮やイランに対して、自らの選挙に有利となるような政策を展開した。3年間にわたる「トランプ外交」は、次の選挙にどのような結果をもたらすのか。共同通信特別編集委員を務める杉田弘毅氏が解説する。

本稿は月刊誌『Voice』2020年3月号、杉田弘毅氏の「米・イランは再び衝突する」より一部抜粋・編集したものです。

 

外交を選挙に利用

民主党が批判するトランプ氏の外交は、イラン政策だけでない。北朝鮮外交では、核実験や日本上空を通過する弾道ミサイル実験で緊張が一挙に高まった2017年秋には、トランプ政権は日本や韓国に住む米国人の退避まで検討した。

その緊張は翌18年には一挙に緩和し、6月のシンガポールでの米朝首脳会談をクライマックスとする対話路線が始まった。しかしいまは、「非核化」と「制裁緩和」で折り合いがつかずに、対決モードに移りつつある。

トランプ氏としては、大陸間弾道ミサイル実験や核実験のような非常事態は鎮めたつもりだろうが、この間、北朝鮮は核・ミサイル能力を着々と向上させている。

トランプ氏が圧力を緩めた2018、19年は、非核化の圧力をかけるという意味では「失われた2年間」だ。

また、鳴り物入りで始まったもの破綻したのが、ベネズエラ政策だ。反米のマドゥロ政権に厳しい制裁を科し、野党指導者のグアイド国会議長の暫定大統領就任を承認して全面的に肩入れし、クーデターまで促した。

政権転覆のための米軍投入も計画された。だが、マドゥロはロシア、中国、キューバの支援でもちこたえ、早期退陣の見通しは立っていない。グアイド氏は急速に力を失い、米国も見捨てたようだ。

トランプ氏は外交を再選の助けになるように動かす点でとくに批判の対象となる。弾劾裁判の対象となったウクライナ疑惑では、外交をここまで自らの選挙のために利用する様子に世界は驚いた。

過去にも、ビル・クリントン大統領が不倫疑惑から目をそらすためにスーダンなどへのミサイル攻撃を実行した、ジョージ・W・ブッシュ大統領のイラク戦争は再選に向けて「強い大統領」を印象付ける狙いがあった、といった憶測は流れた。

だが、トランプ氏の場合は主要な外交課題がすべて再選という目標に結び付いてしまっている。

今年1月の対中貿易戦争の第一段階合意で、専門家が「選挙の道具に使った」とあきれたのが、中国の為替操作国認定からの解除である。

もともと経済が失速している中国がはたして人民元安に向けた誘導を行なっているのか疑問が投げかけられていたが、トランプ政権は昨年8月に中国を25年ぶりに為替操作国に認定した。

貿易戦争のテコに使う狙いは明確で、中国が米製品の大量輸入を受け入れた第一段階の貿易合意とともに認定を解除した。これで為替操作国認定の基礎となる財務省の外国為替報告書が、いくらでも政治的に利用されることが証明されてしまった。

為替操作国の候補である監視国には、日本も含めて10カ国が認定されている。「この10カ国のどの国が次の脅しの対象となり、選挙がらみの交渉で譲歩を迫られるのか」と金融専門家は語っている。

イランへの対抗も、イスラエルの意向を反映したものだ。それはトランプ氏の岩盤支持層であるキリスト教福音派の票をあてにした政策と位置付けられている。

トランプ氏の同盟国軽視の姿勢も、選挙戦の文脈で読み解ける。米国民は日本や欧州などが米軍の犠牲の上で「安保にただ乗り」し、米国から職を奪い、貿易で儲けているという認識に陥りがちだ。

貿易交渉や駐留米軍の負担増交渉なども、「タフな交渉人」を選挙民にアピールする狙いと読みとるべきであろう。

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