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山極壽一「高齢者とゴリラから“遊び方”を学べ」

2020年03月01日 公開

山極壽一(京都大学総長)

複線型人生に必要不可欠な「遊び」

山極壽一

――若い世代は初めて会う人との会話がどことなくぎこちなくなりがちですが、高齢者は自然にコミュニケーションをとっている気がします。

【山極】さらにいえば、高齢者は、複線型人生に必要不可欠な「遊び」にも長けています。「遊び」とはすなわち、生産性や目的のない行為であり、現役世代よりも高齢者の得意分野といえる。

じつは、「遊び」が人間の次に得意なのがゴリラです。ゴリラは鹿やフクロウと戯れるなど、他の動物と触れ合います。

また、身体が大きいので、目線を下げたり背中を丸めたりして相手に合わせる「ハンディキャッピング」を行ないます。相手に普段以上の力を出させて、対等の関係を築いていく。そのため、追いかけたり追いかけられたりといった「ターンテイキング(役割交代)」もできる。

ゴリラは自分たちが一方的に優位に立つのではなく、相手に合わせるという「遊び」のコツを押さえている。さまざまな種と戯れることで知恵が生まれ、多様な動物が共存できる社会を形成しているのです。

人間がゴリラから学ぶことは多いし、とりわけ「遊び」のような労働と直結しない行為は、若者が高齢者から学ぶべきかもしれません。

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