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ウイルス拡散の温床?…中国の寿司屋で見た「日本人には考えられない衛生意識」



2020年02月26日 公開

西谷格(ノンフィクションライター)

 

床に落としたスプーンを……

1時間ほど経って退屈し始めた頃、厨房に入るよう指示された。さぞや不衛生な空間かと思いきや、あれ、思ったよりは汚くない。ぱっと見、日本の飲食店と大差ないようにも感じられる。これは企画失敗か。とりあえず観察を続けよう。

私はオープンキッチンのカウンターでリーダーの横に立ち、サラダを20食分ほどまとめて準備しておくよう指示された。リーダーは阿良(アーリャン)という名で、年齢は23歳と若い。

本名は何かほかにあったが、「アーリャンって呼べばいいよ」と言ってくれた。坊主頭に二重の切れ長の目をしていて、リーダーらしい落ち着いた風格を感じさせた。

ステンレス製の作業台の前に立ち、サラダ用の食器を並べて盛り付けを始めた。学生時代のアルバイトの経験が、こんなところで役に立つとは思わなかった。

小ぶりの器にレタス、プチトマト、紫キャベツ、コーンなどを乗せていき、最後にごまドレッシングを振りかける。なるべく美味しそうに見えるよう、立体的に美しく盛りつけていったのだが、3皿ほど作ったところでダメ出しされた。

「レタスはもっと細かく砕いた方がいい」

アービンはタッパに入っていたレタスの葉をつかむとギューっと固く拳を作って圧力を加え、葉を粉々に砕いた。皿の上に盛られたレタスは握り潰されてしなしなになっていたが、この方が良いらしい。さらに

「ドレッシングが足りない」

と言って、野菜が見えなくなるほどの大量のごまドレをドバーッと振りかけた。もはやサラダというよりコールスロー状態になっていたが、そうしろと言うのだから従うほかあるまい。

中国人は生野菜を食べる習慣が元々なく、野菜サラダを食べ慣れていない人も多い。コールスロー風にすることで生っぽさがなくなるため、この方が美味しいと感じるのであろう。

一息ついたところで、厨房内のメンバーに自己紹介した。20代前半の男性5人ほどと洗い場は中年女性2名。日本の職場のような堅苦しさがなく、みんなフランクでいいやつだった。

眼鏡をかけた先輩コックの横に並んで一緒にサラダを量産していたところ、ギョッとするような光景を目撃した。

先輩はスプーンを使って手際よく缶詰のコーンを盛りつけていたのだが、手が滑ってスプーンを床に落っことした。だが、床から拾い上げるとスプーンの裏と表を一瞬じっと見つめ、汚れがないことを確認すると、そのまま缶の中に戻して使い続けたのだ。

中国人の感覚では、とにかく「視覚的に汚れが見えない状態」であれば問題ないと判断する傾向があるらしい。床に落ちても、目で見て汚れていなければ、洗う必要はないというわけだ。目で確認する暇があったら、水道で洗った方が良いと思うのだが……。目視点検するだけマシというべきか。

サラダ用のレタスがなくなったのでどうしたら良いかと先輩に聞いたら、冷蔵庫から新しいものを出して洗ってちぎれと言われた。レタスを洗うのにボウルか何かを使うのかと思ったら、そうではない。

先輩は洗い物用の薄汚れたシンクにいきなりレタスを2~3個放り込むと、蛇口を勢い良くひねって水をため、ジャブジャブと洗い始めた。水中で丸いレタスを両手で半分に引きちぎり、さらに細かく破砕している。せめて、シンクをたわしかスポンジで磨いてからにして欲しい。

彼らはシンクに食べ物が触れても特に汚いとは思わないらしく、アサリのみそ汁のオーダーが入った際には、ゆでたアサリをシンクの排水溝(ストレーナー部分)に突っ込んで流水ですすいで洗っていた。粗雑に扱われる食材たちを、彼らは自分でも食べたいと思えるのだろうか。

サラダの盛り付けを終えた後は、ランチセットの準備に取りかかる。ランチはすべて重箱で出され、前もってたくあんやサラダなどを重箱内の所定の位置に並べておく必要がある。

たくあんは切り方が恐ろしく雑だった。先輩コックが切り分けている場面を見たが、パックの中からたくあんを取り出すと、和包丁をナタのように扱いながら猛烈な勢いでタタタタタと半月形に切り分けていた。

切り口はメチャクチャで、大半が斜めになっている。厚みも均一ではない。決してゆっくり切る時間がないわけではないのだが、切れていれば何でもいいという感覚なのだろう。

準備のできた重箱は重ねて保管しておくのだが、置く場所は厨房の出入り口付近の床の上で、しかも直置きだった。重箱はタテに10段以上積み、注文が入ると上から順に取っていく。

上の方は胸の高さほどあるから良いものの、一番最後に残った重箱は、もはや地面に残飯を置いているようにしか見えない。通路なので人通りも多い上、そのすぐそばで作業を行う場合もある。汚れた作業靴がむき出しの重箱の真横でせわしなく動いており、見ていると気が気ではない。

靴底の汚れや水滴が跳ねて、重箱内に入り込む恐れもあるだろう。だが、オーダーが入ると床の上の重箱はひょいと持ち上げられ、料理を詰めて客のテーブルへと運ばれて行った。

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