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【橋下徹】安倍首相は「一斉休校を決めたエビデンスはない」ことを堂々と公言すべき

2020年03月03日 公開

橋下徹(前大阪市長)

写真:的野弘路

新型コロナウイルス感染の拡大を受け、安倍政権は「3月2日から全国の小中高校で一斉休校を要請する」と発表した。それに対し、批判の声が相次いでいる。2009年に大阪府で一斉休校を実施した橋下徹・元大阪府知事はこの事態をどう見ているのか。

(取材・文:編集部)

 

ピークカット施策には「明確な根拠がない」

今回の新型コロナウイルス対策における政府の最大の問題は、リスクコミュニケーションの欠如にある。感染症への人類の対応としては、「ウイルスを撲滅する」か「ウイルスと共生する」かしかない。

新型コロナウイルスは、天然痘やエボラ出血熱のような「撲滅しなければならない/撲滅できる感染症」とは異なり、通常のインフルエンザ等と同じく、重症化を防げば症状は許容範囲であり、感染状態が目に見えてわからない「不顕性」感染症であることから、最終的には人類が「共生していかねばならない」感染症だ。

このように撲滅を目指す感染症ではなく、まだそのウイルスの実体がはっきりしていない場合に、その対策として重要なことは、感染者が増え始めた初期段階(感染期・移行期)における時点で、「ピークカット」「ピークずらし」をするということだ。

「ピークカット」「ピークずらし」とは、感染者が日本国内で指数関数的に爆発増加するのを防いだり、ウイルスの実体が明らかになるまで時間稼ぎをしたりすることだ。爆発増加を防いで、医療体制の崩壊を阻止し、時間稼ぎをして有効な医薬品を開発するためだ。

そして、この「ピークカット」や「ピークずらし」施策で難しいのは、感染状況のデータがそろっていない段階で、流行への流れの「気配」を感じ取って施策を打ち込まなければならないことだ。

感染状況がデータ的に明らかになった頃にはもう流行への流れを止めることができない。遅いのだ。

僕は2009年、大阪府知事の時に、新型インフルエンザのピークカットをするために大阪府下の学校を一斉休校にした。実施した時には、今回の安倍首相のように大阪中から猛批判を受けた。批判の中身も今と全く同じようなものだった。

「学校現場が混乱する!」「働く保護者はどうしたらいいんだ!」「感染した子供がいない学校まで休校にしても意味がない!」「一斉休校には何の意味もない!」「学校が救いの場となっている子供たちはどうしたらいい!」という声が多数上がった。

僕は、大阪の高校生に2例目の発症が出たときに、これから感染が爆発的に増加する「気配」を感じた。距離の離れた高校生2人だったからだ。そこで猛批判を受けながらも、一斉休校に踏み切った。

そして、1年後に医学的、公衆衛生学的に検証してみると、大阪の一斉休校には、感染者の爆発的増加を防いだ効果があったことがわかった。

このようにピークカット施策である一斉休校は、数年後に検証してはじめてその効果がわかるものだ。

大規模イベントの中止というのも、「ピークカット」「ピークずらし」施策の代表例だが、このような施策は「『気配』を感じ取って、やるかやらないかを決断しなければならない」。

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