Voice » 社会・教育 » 【橋下徹】安倍首相は「一斉休校を決めたエビデンスはない」ことを堂々と公言すべき

【橋下徹】安倍首相は「一斉休校を決めたエビデンスはない」ことを堂々と公言すべき

2020年03月03日 公開
2023年07月12日 更新

橋下徹(元大阪府知事/弁護士)

政府は「要請」ではなく「命令」を出せ

「要請」という言葉も問題だ。交渉において目標を成し遂げるためには、権限・責任を持った当事者が交渉にあたらなければならないというのが僕の持論だが、こうした考え方はリスクコミュニケーションにおいても当てはまる。

政府が自粛を「要請」するというのは、当事者である政府が責任をとらないことを表している。政府は民間に「要請」だけして、「あとは民間で判断して責任を取ってください」となると、民間は大混乱に陥る。

本来政府は「命令」という形で、強制する代わりに責任もとるようにしないと、民間としてはしっかりとした効果的な行動を起こすことができない。

必要な自粛をせずに、感染拡大を招いてしまったり、逆に不必要な自粛をやってしまったりする。

さらに、どのような規模のイベントをいつまで自粛していいのかわからず、先が見えない自粛ムードになっている。そのことによって、日本の経済が著しく傷つく可能性が高い。

政府は責任をもって自粛方針を示すべきだ。そして民間にしっかりそれに従ってもらうためにも「要請」ではなく、「命令」の形にすべきである。

その代わり、民間への補償も行うべきだ。今は、民間への補償を避けるために、「要請」の形にしている。無責任極まりない。

ゆえに政府は、例えば、「〇〇人以上のイベントは、×月×日まで中止。〇〇人以下のイベントは開催してもいいし、×月×日以後は通常通りに活動してもいい」「本来得られるはずだった営業利益までは補償できないが(それは延期で回収してもらう)、会場費用などのキャンセル費用は補償する」「民間への補償費用として上限2兆円の予算枠を設ける」など、明確な方針を示すべきだった。

これが権限と責任を持った者によるリスクコミュニケーションである。責任を持たない方針は、適切なリスクコミュニケーションにはならない。

もちろん今は、政府が民間に対してイベント自粛の命令を出すことはできない。そのような法律がないからだ。

だからこそ、国会議員は早急に、民間に命令し、その代わり適切な補償をする法律を作ることに全力をあげなければならない。

一斉休校も、社会防衛策なので日本全体で一斉にやらなければ意味がない。ただし、そこで生じるであろう問題、例えば共働き・一人親家庭の児童や特別支援が必要な児童に対しての支援策をしっかり講じ、子供のためにどうしても仕事を休まざるを得ない人の収入補償策も講じる必要がある。

不都合があるからといって、日本全体でやらなければならないことを放棄するのではなく、やるべきことをやるためにはどう不都合に対策を講じるかに知恵を絞る。

このようにして、危機を乗り切っていく日本の政治行政・日本社会にならなければならない。

今回のような危機事態においては、政治家は批判を受ける覚悟で、責任をもって判断し、施策を実行するべきだ。

失敗すれば社会的に抹殺されることもあろう。成功しても、たいして評価されることはないかもしれない。それでも国民、国を守ることが政治家の使命だ。

Voice 購入

2024年5月号

Voice 2024年5月号

発売日:2024年04月06日
価格(税込):880円

関連記事

編集部のおすすめ

橋下徹 「リーダーシップは組織に規定される」

橋下徹(元大阪府知事/弁護士)

橋下徹「大阪都構想は、徹底的に考え抜かれた“実行プロセス”だ」

橋下徹(元大阪府知事/弁護士)
×