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日本を襲う、新型コロナと米「トリプルブルー」政権誕生の脅威

2020年04月01日 公開

渡瀬裕哉(パシフィック・アライアンス総研所長)

2020米大統領選とともに行われる上院・下院連邦議会議員選挙もまた、今後のアメリカ情勢を占う上で注目である。パシフィック・アライアンス総研所長の渡瀬裕哉氏は、民主党が大統領だけでなく、上下両院を制する「トリプルブルー」政権誕生の可能性を指摘。新型コロナウイルス問題で世界経済が後退する中、日本はいかに対応すべきか。

本稿は月刊誌『Voice』2020年4月号、渡瀬裕哉氏の「トランプ再選は『確実』ではない」より一部抜粋・編集したものです。

 

「トリプルブルー」政権誕生の脅威

2020年大統領選挙と同時に行なわれる上院・下院連邦議会議員選挙も注目に値する。仮に大統領が共和党・民主党のどちらになったとしても、連邦議会の上院・下院のいずれかが反対政党に占められた場合、大統領の権限は大きく削がれることとなるからだ。

そして、2020年連邦議会議員選挙では上院・下院ともに共和党・民主党に大きく振れる可能性がある。とくに、民主党が大統領だけでなく、上下両院を制する「トリプルブルー」政権(民主党カラーが青色のため)誕生の可能性はリスクとして認識しておくべきだ。

現在、上院は共和党53議席・民主系(無所属含む)47議席であるが、共和党候補者は大接戦となっているコロラド、アリゾナ、メインの3州で民主党候補者に第3四半期の資金調達量で負けている。

これに加えて、共和党は情勢が流動的な議席がさらに3~4議席存在しており、民主党側がアラバマ州のみ落選の見通しとなっている状況とは大きく異なる。

下院は共和党197議席・民主党232議席(欠員5議席)となっており、すでに共和党は過半数割れを起こしている。

下院では知名度がある現職議員が再選することが一般的であるが、今回は共和党側下院議員は現職の大量引退を控えており、民主党側下院議員と比べて議席喪失の可能性が高まっている。

連邦議会議員選挙で民主党の勢いを支えている要素は、やはり前述のAct Blueがもたらす大量の小口献金である。2018年の中間選挙において、民主党が上院での大敗を回避し、下院で共和党を降した原動力は左派系の資金力である。

Act Blueから流れ込む多額の資金によって下院接戦選挙区で民主党新人が共和党現職を資金力で凌駕する事態が発生し、民主党は豊富な資金と運動力を大いにフル稼働させることに成功した。

そして、これらの左派の小口献金マネーとそれに基づく選挙キャンペーンはアイデンティティ政治を助長させ、好調な経済状況と投票行動のリンクを弱める効果を発揮している。

人種、性別、格差などリベラルな観点から社会的に分断された有権者は、自らのアイデンティティを政治的に一元的に染め上げられることで、経済利害から外れた投票行動を行なうようになっている。

この民主党左派の選挙手法は、経済を基軸に選挙戦を進めるトランプ政権には煙たい動きといえるだろう。

トランプ弾劾のゴリ押しなど力をもて余す左派が暴走することもあり、Act Blueから流入する選挙資金はプラス面ばかりともいえないが、「トリプルブルー」政権をつくり出す原動力として力を発揮し続けている状況がある。

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