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橋下徹「政府は“要請”ではなく“命令”する代わりに、補償をせよ」

2020年04月14日 公開
2023年07月12日 更新

橋下徹(元大阪府知事/弁護士)

改憲で問われる、安倍政権の「交渉力」

――憲政史上最長の在任期間を誇る安倍政権ですが、新型コロナウイルスの影響で東京オリンピック・パラリンピックの開催が延期になりました。政権が正念場を迎えるなか、「最後の課題」は何でしょう。

【橋下】憲法改正の国民投票はぜひ実現してもらいたいですね。これは野党が猛反対し、公明党も難色を示しているので、まさに権力闘争の場です。

すなわち「敵対的交渉」であり、いざというときには「力の行使」も必要になってくるでしょう。

国際政治における力とは最終的に軍事力ですが、国内政治における最終的な力とは選挙の力です。「安倍政権下での憲法改正は絶対反対」と頑なに拒む野党とは話し合いで折り合う余地がなく、選挙を活用するほかない。

キャスティングボートを握る公明党を引き寄せるためにも、選挙の力を行使するしかありません。

2019年4月の大阪府知事・市長のダブル選挙で圧勝した松井さんと吉村さんは、大阪都構想(府と市で行政が分かれている大阪を1つにまとめ、大阪市内を5つの特別区に再編する構想)を実現するために、公明党に対して選挙という「力」を行使しました。

公明党とは徹底的に敵対し、ダブル選挙で圧勝した上で、大阪都構想に賛成しないなら同党が議席をもつ関西の6つの衆議院選挙区に維新の候補者を立てる、と「敵対的交渉」で挑んだのです。

ダブル選挙で惨敗した公明党は、衆議院の議席を守るために、大阪都構想賛成に回った。安倍さんは松井さんと吉村さんが実行したように、改憲において総選挙という武器を最大限に活用すべきだと思います。

EU(欧州連合)からの離脱で混迷しているイギリスにおいても、ボリス・ジョンソン首相が議会との敵対に臆することなく、最後は総選挙で圧勝することによって、離脱に向けて大きく動かしました。膠着した政治を動かすのは、結局は民意の力です。

――ただ、安倍首相は「私の手で必ず改憲を成し遂げる」と発言しながらも、新型コロナウイルスの影響もあり、具体的な動きは停滞しているように見えます。

【橋下】憲法審査会(憲法改正原案を審査する国会の審査会)で激しい敵対的交渉を仕掛けるべきです。新型コロナウイルスの対応でしばらく議論が難しいのであれば、夏以降を期待しています。

野党は徹底的に反対しているので、審査会での全会一致原則は機能しません。全会一致はただの慣例にすぎないのだから、審査会において自公維新の過半数で強行突破すべきです。

多数決で憲法改正案を可決し、憲法審査会を大紛糾させ、改憲の賛否の議論を日本中で沸騰させるのです。

改憲反対派のメディアは、大反対キャンペーンを仕掛けてくるでしょう。そのタイミングで、解散総選挙によって民意を問う。

これで改憲派が3分の2の議席を獲得すれば、堂々と多数決で改正案を本会議で成立させて、国民投票を実施する。

選挙の力を使って膠着している改憲論議を動かすのです。任期の総仕上げに向かう安倍政権は、まさしく政党やメディア、国民とのあいだで「交渉力」を発揮すべきときでしょう。

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