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コロナ禍で強行された韓国総選挙、与党圧勝で反日路線強化か

2020年04月19日 公開
2022年07月08日 更新

金敬哲(ジャーナリスト)

文大統領が目論むレガシー(政治遺産)

このように普段より煩わしい手続きにもかかわらず、同日に行われた第21代総選挙の投票率は66.2%で、1992年の第14代総選挙以後、最高の投票率を記録した。

選挙結果は、やはり当初から予想されたとおり、与党の圧勝だった。全300議席中、与党・共に民主党と共に市民党が180議席、未来統合党は103議席に過ぎなかった。

この歴史に残る与党の大勝利によって、韓国国会は巨大両党体制ではなく、日本式の一党体制に突入することになり、国会で政権をけん制できる勢力は崩壊してしまった。

これによって、文在寅政権は任期下半期の国政運営を何も邪魔されず存分に進められるようになった。とくに、今後は北朝鮮との関係改善に動き出すだろう。

具体的には国家保安法の撤廃、国情院法の改正を通じた対共捜査権の廃止、対北朝鮮制裁の解除を促す国会決議案の採択など、南北関係の改善に向けた政策が次々に打ち出されるものと予想される。

文在寅大統領は、残りの任期2年で、北朝鮮との関係改善を自らの政権の「レガシー(政治遺産)」にしたいからだ。

一方、日韓関係においては以前よりも強硬な態度に出る恐れがある。今回の選挙で与党側では野党を親日勢力と規定し、「親日勢力の清算」を選挙スローガンに設定した。

結果、反日市民運動家の尹美香(ユン·ミヒャン)正義記憶連帯前理事長が与党の比例代表として国会入城したことに加え、与党所属の国会議員らは歴史問題などを巡って日本の主張に同調する言行に法的な制裁を加えるという「親日賞賛禁止法」の国会立法を予告した。

反日市民団体と労働団体によって、「親日国会議員のいない国会づくり」という運動が選挙期間中に繰り広げられて、韓国国民の反日感情を刺激した。

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