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新型肺炎、流言に対するメディアリテラシーを高めよ

2020年04月23日 公開
2022年07月08日 更新

福田充(日本大学危機管理学部教授)

危機が発生している段階での合意形成では遅い

新型コロナウイルスのような新感染症に対して、社会は先述したようなハード管理戦略(社会統制を強化して経済的損害が発生しても早期終息をめざす戦略)をとるのか、ソフト管理戦略(経済的損害が発生しないよう社会統制は行なわずある程度の死者の発生を容認する戦略)をとるのか、社会的議論を行なうことによって、民主主義的な合意形成が必要不可欠である。

ある程度毒性の高い新感染症のパンデミックにおいては、死者数と経済的損害はトレードオフの関係であり、その中間的対応や合わせ技に効果はない。

本来、この合意形成は危機が発生している最中ではなく、平常時において時間をかけてじっくりと冷静にかつ合理的になされるべきである。そうすることで、平常時から、新感染症パンデミックに対する自治体や企業、学校、病院などにおける対策は始まるのである。

とくに、新感染症パンデミックが発生した状況下でも、こうした自治体や企業、学校、病院が業務継続できるようにするための感染症対策のBCP(Business Continuity Plan:業務継続計画)の構築が必要である。

企業は社員や職員が出勤できなくなった場合にどのように在宅ワークを継続できるか、どのように電気、ガス、水道、通信などのライフラインを維持し、鉄道・バス・航空機などの交通機関の運行を維持することができるか、その対策を整備せねばならない。

休校措置となった場合に学校はどのように授業や試験を継続するか、オンライン授業などの整備を進めねばならない。日本の自治体や企業のBCPは、自然災害対策に偏重している傾向があり、感染症に対するBCPの構築が求められている。

こうした危機事態を克服するために必要なテクノロジーとして、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、ドローン、ロボティクスなどのイノベーションを活用した感染症対策も必要だ。危機管理におけるイノベーション・テクノロジーの活用が喫緊の課題である。

さらに研究という分野での課題を挙げるとするならば、新感染症パンデミックに対して(1)感染症学などの医学だけでなく、(2)公衆衛生学、(3)公共政策学の3つの学問領域が連携して対応して初めて、新感染症の医学的、感染症学的分析や、社会における公衆衛生学的な対策の構築、自治体や企業、学校などの対応を公共政策学的に連動させることができる。

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