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「タバコ購入からゴミ捨てまで」タダ同然で働かされる中国のデリバリー事情

2020年04月22日 公開
2023年04月17日 更新

西谷格(ノンフィクションライター)

 

ワイルドすぎるビジネスモデル

「定時に届けないといけなくて、1秒でも過ぎたらタイムオーバーと見なされる。12分以上の遅れで30元(480円)、苦情が入ったら200元(3200円)が給料から差し引かれてしまう。遅れそうなときはお客さんに連絡して、先に受け取りボタンを押してもらえないか頼むこともあります」

かなり時間に追われる仕事のようだが、「自由にできるのは気楽でいい」と不満はそれほどないそうだ。毎月3000元(4万8000円)ほど貯金できるので、ある程度生活に余裕があるという。

私が注文したときの配達料は5・3元(約85円)だったが、ドライバーは1回の配達で7元(112円)ほどの利益があるというから、飢了么はどうやって帳尻を合わせているのだろうか。

レストラン側からも一定の料金を取っているだろうし、顧客の購買データ、すなわち「ビッグデータ」とやらを集めることでも、利益が生まれるのかもしれない。

人件費が安いこと、電動バイクは免許不要であることなどが安価な配送料の背景にあるのは間違いないが、それに加えて、相当に薄利のビジネスモデルで運営しているように思われた。

こうして見ていくと、どこでも自転車に乗れるシェアサイクルは、車両がボロボロ。自家用車タクシーのライドシェアは、白タクまがいのドライバーが違法運転。何でも運んでくれるフードデリバリーは、免許不要の電動バイクが分刻みで街を疾走。

デジタルチャイナの姿は、ぱっと見は先進的でありながら、よく見ると大陸的な荒っぽさ、さらにいうなら「ワイルドさ」を伴っている。荒削りなビジネスが世の中をダイナミックに動かしていく姿は、停滞社会ニッポンに暮らす者から見ると羨ましく思える一方、この野蛮さは日本人には合わないなあと痛感した。

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