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「エンタメが現場から崩壊しかねない」ホリプロ社長が恐れる最悪の事態



2020年05月16日 公開

堀義貴(株式会社ホリプロ代表取締役社長)

堀義貴※画像はイメージです。

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。日本政府は2月26日以降、大規模イベント等の開催について、中止や延期、規模縮小を求めてきた。4月7日には緊急事態宣言が発令され、音楽や演劇などのイベントの開催はさらに困難を極めている。大手芸能事務所であり、エンターテインメント事業を手掛けるホリプロの堀義貴社長は、この未曾有の事態をどう捉えているのか。エンタメ業界が直面している現状とともに、難局に向き合う覚悟について伺った。

本稿は月刊誌『Voice』2020年6月号、堀義貴氏の「エンタメが現場から崩壊しかねない」より一部抜粋・編集したものです。

聞き手:Voice編集部(中西史也)

 

タレントのアイデアの芽を摘んではならない

――あらゆるイベントの開催が自粛に追い込まれています。いまエンタメ業界の現場はどういった状況なのでしょう。

【堀】 はっきりいって、八方塞がりです。2月末に政府からイベントの自粛要請が出て以降、当社では新型コロナウイルスの感染状況を見極めながら、延期や中止の措置を講じてきました。

さらに4月7日の緊急事態宣言を受けて、イベントは軒並み自粛しています。

ホリプロは芸能事務所のイメージが強いかもしれませんが、会社自ら演劇の制作を手掛けています。それぞれが公演に向けて準備を進めてきましたが、ほとんどの作品は、少なくとも今年夏ごろまでは延期せざるをえないでしょう。

現在は演劇制作の収入が得られない状態です。当社が主催する舞台に出演予定だったタレントに対してどう支払いをするのか、という問題もあります。

もちろん当社自身もタレントを抱えていますから、彼ら彼女らが出演するはずだった分のギャランティがいただけるものか、先行きは不透明です。

コロナの影響は舞台だけではなく、テレビや映画にも波及しています。当社が制作に関わったり、所属タレントが出演したりする映画も公開延期になり、公開日が未定の作品も多い。

ドラマの収録も止まってしまい、現時点(4月下旬)では再開の目途が立っていません。

――仕事ができない焦燥感とともに、収入を得られないかもしれない不安は察するに余りあります。

【堀】 さらに、舞台の稽古場やテレビ・映画の収録・撮影現場は人が密集する場所なので、そこで仕事を行なうことへの恐怖感もつきまといます。

もちろん、自粛前から出演者やスタッフ同士が距離をとり、人数を制限するといった感染防止策については万全を期していましたが、それにも限度があります。経済的にも精神的にも疲弊し、先の見えない状況です。

――こうした厳しい事態だからこそ取り組める策はあるでしょうか。

【堀】 タレントやアーティストが自宅で音楽を奏でたり踊ったりして発信することで、視聴者に楽しみを提供することはできるでしょう。こうしたタレントのアイデアの芽を摘んではならないと思っています。

とはいえ、会社として組織立ってできることはほとんどないのが正直なところです。社員は原則在宅勤務で、タレントも自宅待機なので、皆が集まって会話をすることもできない。私たちにとっては、舞台、映画、ドラマの撮影や収録が作品の源ですから。

――オンラインを活用して新たなコンテンツを展開することは難しいでしょうか。

【堀】 オンライン配信で収益を得られたとしても限定的です。社員全員が食べていけるレベルには程遠い。

世界2位の音楽市場(音楽ソフトと配信の合計売り上げ)を誇る日本でも、2018年の国内市場規模は約3000億円程度で、急成長しているといわれる配信サービスはそのうちの約650億円にすぎません。

これはエンタメ全体にいえることですが、無料のコンテンツを流せば、有料のものにマイナスの影響が出てくることがしばしばあります。とくに若い世代には「エンタメはタダで楽しむもの」と思っている方が少なくない。

オンラインの活用をいうのは簡単ですが、やはり大部分はリアルコンテンツに頼らざるをえないと考えています。

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会見で触れられなかった自粛への感謝 >



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