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上陸禁止の「神宿る島」が世界遺産に選ばれた理由

2020年06月12日 公開
2020年11月10日 更新

伊豆美沙子(福岡県宗像市長)

資源ごみは22種類に分別し、海を守る

――伊豆市長自身は、もともと海との関わりはあったのでしょうか。

(伊豆)先祖が島の民で、私も「世界青年の船」事業で各地の海を巡りました。海への思いが高じて、クルーズコーディネーターの道も歩みました。「板子一枚下は地獄」という言葉があるように、つねに危険と隣り合わせであるすべての船乗りを尊敬しています。

――宗像市は海の環境保全にも精力的に取り組んでいますね。

(伊豆)「Save the Sea」の合言葉を掲げ、邁進しています。たとえば、2018年から製菓メーカーの湖池屋さんと「海の環境保全」をテーマに、連携事業としてオリジナルポテトチップスを全国販売中です。

一袋当たり一円が寄付され、海の環境保全活動に役立てています。海をメインテーマにしたシンポジウム「宗像国際環境100人会議」では、世界遺産の海を守ってきた宗像ならではのメッセージを国内外に発信しています。

また、環境にやさしい石鹸を推奨しています。多くの洗剤には合成界面活性剤という成分が含まれており、それが河川に流されることで、水生生物に悪影響があるといわれています。

ほとんどは下水処理場で処理されるものの、ゼロにすることは難しい。そこで宗像では1990年代から、環境にも人の身体にもやさしい廃油を再利用した手づくりの石鹸づくりに取り組んでいます。

もともと宗像市は3R(リデュース・リユース・リサイクル)への意識が高く、1997年から資源ゴミの分別を始めていました。当初は9種の分別でしたが、いまでは22種に分けています。

缶は鉄とアルミに、ビンは色や用途別で細かく分別している。市民にとっては手間のかかる作業ですが、行政が周知し、学校教育の場でも資源ゴミの分別をみっちり教えています。

――市民一人ひとりの努力が故郷の環境を守ることに貢献しているわけですね。

(伊豆)海水温の上昇や環境の変化によって魚が獲れにくくなっている、という漁業従事者の悲痛な声も聞こえてきます。私たちの生活は豊かな自然があってこそ成り立っていることを、多くの人に感じてもらいたいと思います。

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