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新型コロナの経済損失は「半年で57兆円」…第二波を防ぐ“唯一の手段”



2020年07月03日 公開

小黒一正(法政大学経済学部教授)

小黒一正

緊急事態宣言が解除され、われわれは日常生活を取り戻しつつある。しかし、再流行が起きたときに再度四月と同じような自粛生活に戻れば、経済損失は計り知れない。

すでに、新型コロナの影響により巨額の経済損失が発生すると指摘されている。では、再流行に備え、われわれがすべき経済施策は何なのか。「衆議院議員選挙」制度を模範した検査拡充の必要性など、経済正常化のための具体的な施策を提案した(聞き手:『Voice』編集部)。

※本稿は月刊誌『Voice』2020年7月号、「検査拡充が『経済正常化』の鍵」より一部抜粋・編集したものです。

 

半年で57兆円超の経済損失

緊急事態宣言は解除されたものの、現在の経済状況は極めて深刻であり、大規模な連鎖倒産を回避するには、残り半年程度がタイムリミットになる。つまり、一刻の猶予もないのだ。

売上が前年同月比で9割減の企業もあるが、東京商工リサーチの第四回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査(速報値)によると、前年同月における4月の売上を100とするとき、10905社のうち約84%の企業が前年割れで、売上の中央値は全企業・中小企業・大企業のいずれも80%である。

5月以降の売上減はさらに加速する可能性があり、かりにこれら産業の売上がコロナウイルスの影響により前年同日比で1日20%減少と予測するとき、日本全体の「売上蒸発」はどの程度になるのか。

一つの参考になるのが、経済産業省が公表する「経済センサス・活動調査」である。直近(2018年6月)の確報によると、2015年における全産業の売上高は約1625兆円である。

2015年の名目GDPは約531兆円なので、全産業の売上高はGDPの約3倍であり、全産業における1日当たりの売上高は平均で約4.5兆円である。

また、全産業の売上高のうち、旅館・ホテル等の宿泊業・飲食サービス業は約25兆円、映画館や劇場等の生活関連サービス業・娯楽業は約46兆円、デパート等の卸売業・小売業は約501兆円だ。

これら産業の売上高が全産業の売上高に占める割合は約35%であり、これらの産業における1日当たりの売上高は平均で約1.6兆円である。

すなわち、長期間にわたる外出制限や飲食店などの営業活動の自粛による売上蒸発は、旅館・ホテル等の宿泊業・飲食サービス業、映画館や劇場等の生活関連サービス業・娯楽業、デパート等の卸売業・小売業だけで、1日平均約0.32兆円であり、1カ月で9.6兆円になる可能性もある。

この試算は前提に依存するが、自粛が長期化し、3カ月継続すると、28.8兆円の売上蒸発になる。6カ月継続ならば57.6兆円(名目GDPの約10%)であり、これだけの売上蒸発が数カ月にわたって継続すると、企業の資金繰りに甚大な影響を与えることは想像に難くない。

実際、2020年版の「中小企業白書」(4月20日閣議決定)では、「宿泊業・飲食サービス業では、今後半年間で資金繰り難が深刻化する可能性」を指摘している。また、2018年度の法人企業統計調査(財務省)によると、資本金1000万~5000万円の中小企業が保有する現預金は運営コストの約三カ月分しかない。

 大規模な連鎖倒産が本格化する前に、全国民が希望すれば1~2週間に1度PCR検査や抗原検査を受けられる体制(1日1000万~2000万件の検査)を整備し、継続的に陰性の者は安心して外出や仕事を再開できるようにすることを目標とする必要がある。

批判よりも、どうやって実現するかの視点が重要であり、PCR検査に限らず、高精度で有用性が高い検査は積極的に取り入れる姿勢も重要だ。

また、「出口」への移行は、感染者のうち入院による治療を必要とする人びとが、速やかに入院治療を受けられる環境が整えられていることを前提条件とする。一定数の空き病床が確保されているかをつねにモニターし、病床の逼迫の状況に応じて平時モードへの移行を休止するなどといった、柔軟な対応がなされる必要がある。

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