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新型コロナの経済損失は「半年で57兆円」…第二波を防ぐ“唯一の手段”

2020年07月03日 公開
2020年07月03日 更新

小黒一正(法政大学経済学部教授)

 

検査拡充のモデルになるのは衆議院議員総選挙

新型コロナウイルス・V字回復プロジェクト

日本全国で1日1000万~2000万件という規模のPCR検査(抗原検査を含む)などを実施する体制を考えるにあたっては、韓国のドライブスルー方式や東京都医師会の「地域PCRセンター」、現在検討中の歯科医師や医学部等の研究室、アメリカNY方式の薬局の活用もあるが、衆議院議員総選挙の実施方法も参考になるであろう。

総選挙では、1日に全国で約5000万人の国民が町々の投票所で5分ほど投票を行なうが、投票所に人びとが押しかけて大混雑している事態はあまり見たことがない。

したがって、1日に1000万人~2000万人の国民が町々でPCR検査や抗原検査などの5分程度の用事を行なうことも、それほど混乱なく実施することは不可能なことではないはずだ。

場所も、投票所になるような体育館や公民館などが候補となる。もちろん、検査所での感染を避けるため、屋内なら換気はしっかり行ない、また、人と人との間隔をあけるべきことはいうまでもない。

それでも、ある時間帯(たとえば開場時)に多くの人が集まりすぎると集団感染のリスクが高くなるので、検査の時間帯を細かく分ける工夫が必要である。

一つの案としては、年齢(小学生の子を連れた親、20~24歳、65~70歳など)あるいは住所(例:〇〇町〇番地)ごとに、対象となる検査時間を割り振る工夫が考えられる。

年齢や住所別の人口数は市区町村が把握しているので、どの年齢・住所にどう検査時間を割り当てると混雑を回避できるかはすぐ計算が可能であろう。また、来場者の年齢や住所は、免許証や保険証などの身分証明書で簡単に確認することもできる。

それだけ大規模な検査を全国で行なうには、当然ながら相当数の人員と資材を確保しなくてはいけない。人員については、医師、看護師等の医療専門家だけでは検査要員が圧倒的に不足するため、時限的な特別措置として、一定の研修を受けた医療無資格者も医師等の監督の下で検査を行なうことを認める必要があろう。

その際、検査拡大を公共事業の一種に位置付け、外出制限や営業自粛によって職や収入を失った方々を優先的に雇用して、検査拡充に必要な人員を確保していくことを提案する。

また、資材の確保を妨げるボトルネックの解消をできるだけスムーズに行なえるよう、官邸を中心に関係省庁、都道府県および協力団体などで「新型コロナウイルス検査緊急対策ネットワーク」を構築し、一体となって資材調達、実施、検査結果の集約・分析などを行なうことを提言する。

なお、検査体制の拡充には予算が必要であり、われわれの緊急提言では、(1)精度の高い検査キットの開発普及・低価格化で予算5~9兆円(仮)、(2)検査体制の整備(人件費、検査人材の能力開発を含む)で予算3兆円(仮)を見込んでいる。

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