Voice » 社会・教育 » 実在しない「国立感染症予防センター」から届くメール…コロナ・サイバーテロの怖い実態

実在しない「国立感染症予防センター」から届くメール…コロナ・サイバーテロの怖い実態

2020年07月07日 公開
2020年07月07日 更新

今林広樹(EAGLYS代表)

 

量子コンピュータでも解けない暗号

――今林さんが開発しているサイバーセキュリティシステムでは、「秘密計算」を用いてデータを暗号化したまま処理をされていると伺いました。どのようなシステムなのか、教えていただけますか。

(今林)VPNやファイアウォールは、データを壁で囲んで外から見えていない状態です。しかし、壁を突破されてしまえば、データは見放題になってしまう。そこで私たちが開発しているのが、エクセルやワードに書かれるような”文字や数値自体”を暗号化するシステムです。さらに、その暗号化した状態で検索や集計分析ができます。

病院で何かの検査をするとき、遺伝子や病気に関する個人情報を病院側に渡しますよね。しかし、院内のコンピュータがハッキングされれば、たちまち流出してしまいます。

そこで、個人情報自体を「秘密計算」によって暗号化します。複雑な変換式を使って、体重、身長、血液に関する情報、遺伝子情報をはじめとした個人情報を、暗号化したまま計算処理ができる技術が秘密計算です。

再び病院の検査を例にするならば、平均的な人間の健康数値を機械学習させたAI(人工知能)に、暗号化した個人の医療情報を読み込ませる。すると、秘密計算によってスコアリングが行なわれ、「この人の健康スコアは87点です」などの予測結果が返されるのです。

暗号化した情報でやり取りするため、プライバシーは犠牲になりません。さらに、このような情報は、量子コンピュータの開発が進んでもまず解けないでしょう。

 

個人でできるサイバー対策

――一般市民にとって身近な例もお聞きしたいと思います。普段の生活では、どのようなサイバー攻撃の脅威が迫っていますか。

(今林)クレジットカード情報をハッキングされて預金が抜かれるなど、サイバー攻撃の脅威はすでに私たちのすぐ側まで迫っています。いま実用化が進んでいる自動運転車でも、内部のコンピュータがハッキングされてハンドルの誤操作が生じれば、命に関わる問題となる。

すぐにできる対策としては、例えば、コロナの状況もあるので受け取るメールの開封および情報提供を求められた際には、その送信元、リンク先URLの確認を行い、信頼していいか判断する。

一般的には、IDやパスワードを突破されないように、二段階認証を活用する。スマホで何かのアプリやサービスにログインするときに、何も考えずに、フェイスブックなどのSNSに連結させないことも重要です。

「このシステムに登録したら、どういう個人データが取られて、他者に提供される可能性があるのか」とつねに考えて、注意する癖をつけてください。街中に監視カメラが溢れる現在、「私はいまデータを取られているな」という意識をもつことも大切です。

自分のあらゆる情報はサイバー空間に繋がり、ハッキングや監視の標的になる可能性がある。そうした認識をもつことがスタートだといえます。

Voice 購入

2024年5月号

Voice 2024年5月号

発売日:2024年04月06日
価格(税込):880円

関連記事

編集部のおすすめ

北朝鮮・偵察総局が主導する、大規模サイバー攻撃の真実

古川勝久(国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネル元委員)

なぜ自衛隊員にコロナ感染者が発生しなかったのか? 統合幕僚長が語るその“勝因”

山崎幸二(第六代統合幕僚長)
×