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世界が不思議がる「日本モデルの成功」その謎を解く3つの鍵



2020年07月13日 公開

國井修(グローバルファンド〈世界エイズ・結核・マラリア対策基金〉戦略・投資・効果局長)

「森を見て全体像を把握する」クラスター対策

長年、感染症対策に携わってきた私なりの考えを述べさせてもらえば、3つのファクターが関連しているように思う。

1つは、初動とクラスター対策である。初めての感染者報告は東京では1月24日、ロンドンでは2月12日、ニューヨークでは3月1日だった。

最近の調査や研究によると、フランスで昨年12月に肺炎と診断された患者の血液から新型コロナが検出されるなど、武漢市での新型コロナ流行が報告される前からすでに欧州には感染が流行し始め、国際都市ロンドン、ニューヨークにもウイルスが侵入していたと考えられる。

しかし、欧米では新型コロナを対岸の火事と見て、「コロナは恐れるに足りず」「ただの風邪だ」「いずれ消えていく」などのメッセージを政治家が伝える国もあった。

2~3月に大規模なパレードや集会が開かれた国も少なくない。欧州内の移動も欧米間の渡航も3月中旬以降までほとんど制限されなかったため、多くの感染者の移動が発生し、気づいたときには感染がかなり拡大していたと思われる。

日本と欧米とでは接触者調査の対策なども違っていたと言われる。以前、SARS流行の際に世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局で指揮をとり、日本の専門家会議のメンバーである押谷仁(おしたに・ひとし)氏によると、日本は「森を見て全体像を把握する」が、欧米は「木を見る」戦略だという。

日本では感染状況のデータ分析を基に、専門家らによってクラスター対策が考案されたという。接触しても八割の人には感染させないので、それよりも残りの2割、集団発生(クラスター)をさせる大きな感染源やその環境に着目して感染者を同定し、伝播を断ち切っていくものである。これがお馴染みの「三密」で、最近、海外に向けては3C(Closed spaces、Crowded places、Close-contact settings)として発信されている。

欧米では、感染者周囲の接触者すべてをもぐら叩きのように追跡・検査し、感染者を見つけてはまた同じことをするため、非効率な消耗戦になってしまう。

1つひとつの木を見ているあいだに、森のどこかで感染が広がっても見えないことがある。それよりは森全体を見て、少しの感染は見逃しても大きく感染が広がりそうなところを叩いていく、との考え方である。

これはとても有効な方法だと思うので、データの裏付けを加えながら世界に発信してほしい。ただし、感染がある程度広がってくると、現存の人材・方法では対応が困難となり、感染経路の不明も多くなってくる可能性があるため、その効率性を含めて改善が必要だと思う。

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