Voice » 社会・教育 » 世界が不思議がる「日本モデルの成功」その謎を解く3つの鍵

世界が不思議がる「日本モデルの成功」その謎を解く3つの鍵

2020年07月13日 公開
2022年02月22日 更新

國井修(グローバルファンド〈世界エイズ・結核・マラリア対策基金〉戦略・投資・効果局長)

公衆衛生従事者の地道な貢献

2つ目は、外からは見えにくいが、47都道府県に400以上ある保健所、さらに市町村などの保健師を含む公衆衛生従事者の貢献だ。

私はかつて、栃木県の奥日光にある山村で地域医療に従事し、東日本大震災などの緊急援助に関わったことがある。そのとき、地域の保健師と一緒に仕事をしたが、彼らの責任感の強さや勤勉さ、粘り強さには脱帽だった。

じつは日本の感染症対策は、彼らの努力なくしてはありえなかった。かつて日本でも風土病であったフィラリアやマラリアの撲滅、国民病といわれた結核の激減など、地域のなかで住民に寄り添いながら地道な活動をしてきた保健師らの役割は大きい。

今回の新型コロナ対策でも、アナログではあるが、患者に電話をかけて過去二週間に会った人の名前を尋ね、丁寧に接触者を追跡して感染を断ち切っていくというクラスター対策を支援した。

地域の特性を熟知し、住民との信頼関係を築いている彼らは多大な貢献をしていたという。土日の休みもなく、住民からの相談や、自宅やホテルなどで療養している感染者の健康観察、そして悩みごとの相談なども行なっていた彼らは、新型コロナ対策の立役者といってもいいだろう。

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