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G7で最悪の水準…日本で自殺者がこれほど多い2つの理由



2020年07月21日 公開

河西千秋(精神科医)

河西千秋(精神科医)

《日本の自殺死亡率は、G7のなかでワーストである。厚生労働省によれば、長らく十代~30代の若者における死因の1位が自殺であり、40代でも2位、50代前半でも三位に入る。どうして日本ではここまで自殺が多いのだろうか……。

自殺予防に詳しい精神科医・河西千秋氏は『Voice』8月号にて掲載された「コロナとの闘い、自殺対策を急げ」にて、その2つの理由を挙げている。本稿では同稿の一部を紹介する。》

本稿は月刊誌『Voice』2020年8月号より一部抜粋・編集したものです。

 

自殺者数が遅発的に増加していく懸念

今年(2020年)4月の自殺者数は前年同期比で大幅減少し、過去5年間で最少になった――。この報道を耳にして意外に感じた読者も多いのではないだろうか。

厚生労働省の発表によると、国内における4月の自殺者は、前年4月から18.9%減少の1455名。外出自粛や在宅勤務の推奨により、職場や学校での対人ストレスが軽減されたのが減少要因との憶測もある。

一部はその通りかもしれないが、一般化することはできない。経済的打撃と自殺者の増加には往々にしてタイムラグが生じる。中長期的にみれば、今後、自殺者は大きく増加してしまう可能性があるのだ。

今回のパンデミックは、東日本大震災クラスの大規模自然災害に匹敵する出来事だ。自然災害が起きた直後、被災者は何とかその場をしのごうと、協力し合いながら一所懸命に生活再建を図る。

一部の人びとに英雄的な行動がみられこともあるこの時期は、「高揚期」と呼ばれるが、現在の苛酷な状況をどうにか生き抜こうと気持ちが昂ぶっているあいだは、自殺者数は比較的低減する。

しかし、なかなか苦境から抜け出せず、期待したような支援が得られないといった厳しい現実に直面すると、自殺者は遅発的に増えていく。実際、福島県では東日本大震災の翌年から、宮城県、岩手県はそれから遅れて、一時は減少傾向にあった自殺者数の上昇が認められている。振り返ると、バブル崩壊の余波で1997年に山一證券をはじめとした金融機関が破綻したのちに、自殺者が急増したのは翌98年3月のことであった。

今回のパンデミックにおける直接被害・間接被害は、全国の隅々まで波及した。生産・物流・販売といった、生活に直結する部分にとどまらず、為替や株価変動においてもグローバリズムの影響が覆いかぶさる。

さらに、人びとの感染に対する恐怖心や気持ちの萎縮、活動性の低下が連鎖的に広がり、その経済的損失は甚大な規模にまで拡大している。現在、生活困窮者の実態が繰り返し報道されているが、パンデミックが収束したとしても、その後、遅発的に自殺者が激増する懸念がある。

「生活困窮→自殺」という図式は、多くの人にとって理解しやすい流れだろう。しかし、あなたが生活に困窮するという状況に陥ったとして、すぐに自殺を実行してしまうだろうか。

仮に、自殺をする場面を想像すれば、胸がざわざわし、強い恐怖を感じるだろう。そもそも、自殺をしてしまう前に打つべき手はまだあるはず、と考えるのではないだろうか。

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