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大統領選、バイデン氏有利の流れが変わった?

2020年09月19日 公開
2023年02月01日 更新

ケント・ギルバート(米カリフォルニア州弁護士),石平(評論家/拓殖大学客員教授)

ケント・ギルバート

大統領選の鍵を握るのはあくまで「激戦州」

【ケント】(11月の大統領選について)日本のマスコミは、世論調査の結果だけを見て、トランプが不利だと嬉しそうに報道していますが、アメリカも日本も世論調査ほど当てにならないものはありません。前回の2016年の選挙でも、ずっと世論調査ではトランプが不利だったんですから(爆笑)。

【石平】世論調査だけ見れば、トランプは大統領になっていないはずですわな。

【ケント】そうなんです。選挙人制度はわかります?

【石平】はい、わかります。

【ケント】直接投票ではありません。各州にその州の国会議員と同じ数の選挙人が割り当てられます。この選挙人はそれぞれ、誰に投票するかをすでに決めていて、州ごとに一番多く票を集めた候補者が、その州の選挙人の票を総取りできるというシステムです。要するに、子どものとき、誰でもやった陣地取りごっこだと思ってください。

前回の選挙では総得票数はヒラリーのほうがおよそ300万人多かったのですが、それは、民主党が圧倒的に強いニューヨークとカリフォルニアで「300万人ほど票を獲得しすぎた」だけです。

【石平】民主党の牙城ですからね。

【ケント】そうです。今回も数の上ではニューヨークやカリフォルニアはバイデンが勝ちますよ。しかし、どんなに大きな差をつけても、選挙人の数は変わりません。絶対トランプに投票する州もある。民主党が強いニューヨークとカリフォルニアは代表的ですが、絶対そうしない州もある。

問題は、そのほかにスイングステートと呼ばれる「激戦州」があります。選挙戦は主に、どちらの支持基盤なのか、わからない州で行われます。フロリダ、ノースカロライナ、オハイオを含めて12の州だと思います。

【石平】いわゆる紫の州ですね。大統領選挙で、各州、どちらが強いのかを地図で色分けする。赤が共和党で青が民主党。そのどちらでもないグレーゾーンを紫で表現します。ですから、大統領選は、どれだけ紫を取り込めるかにかかっているという話を聞いたことがあります。

【ケント】その通りです。どちらに入れるか未知数の州。本来は赤だけれど、もしかして、コロナの対応次第で青になるかもしれないという州です。それらの州でトランプ大統領のコロナ対応が評価されるかどうかが、鍵を握るんです。

次の大統領選挙は、大統領のコロナ対策の審判になると思います。しかし、新型コロナウイルス自体、トランプさんの責任ではありませんし、経済優先の対策は高く評価されると私は思います。

むしろ、問題になっているのは民主党の知事や市長です。経済活動を再開しようとするときに、独裁者みたいにいつまでもロックダウンしようとします。私には、これが一種のファシズムに見えるんですよ。トランプさんは「早く経済を再開させましょう」と言う。しかし、民主党の知事や市長は「いや、それは危ない」と止める。

特に厄介なのは、学校を再開しようとするときに、教員労働組合でコロナに関係のない不合理な政治的条件をつけようとすることです。そして、最も困っている人たちは、小・中・高校生の子どもを持っている家庭です。子どもが学校に行かないと、親がまともに仕事に戻れません。

【石平】いい加減、日本人も懲りたでしょ。テレビに出てくる自称・専門家が「なぜ、ロックダウンしないんだ」とさんざうるさく言って、「では、自粛してください」って言うと、また文句を言う。

【ケント】ですから、コロナ対策に関してはトランプさんは大丈夫だと思います。結局、世論調査を見ていると、トランプさんはスイング・ステート(激戦州)の中では有利なんですよ。ただ先ほど言ったように、あまり世論調査を妄信してはいけないのです(笑)。しかし、よほど下手なことをしない限り、私は当選できると思うんですよ。

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