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「開成高校卒、試験に13回落ちた」異端の調教師が、競馬の世界で成功できた理由

2020年10月21日 公開

矢作芳人(調教師)

 

名馬を続々と輩出をする矢作厩舎は「退職者ゼロ」

――矢作厩舎は開業してから1人も退職者を出していないと聞きました。秘訣はありますか。

短期、中期、長期目標を共有し、従業員がつねに同じベクトルを向くように意識共有を図っています。

また一つの会社の代表として、関係者や従業員、ひいては世の中に映る自分の見せ方をつねに考え、身の振る舞いを使い分けています。たとえば、外部の関係者が従業員に失礼な態度をとった場合には、その方をスタッフの前で怒鳴りつけました。

「ボスは自分たちをちゃんと守ってくれる」。そういった信頼感が、全体の結束を生み出す。同様に、厩舎に所属する騎手をみなの前であえて叱ることもあります。

彼が厳しい教育を受けていると知ることで、「矢作に厳しく育てられているのなら、上手くなるに違いない」と騎手の評価が上がる。言葉で感情を伝えることは、人を育てるうえで一円たりともお金のかからない投資です。

――矢作厩舎の従業員はみなが家族のようだと表現されることがありますね。

そうですね。一人ひとりの性格から適性を見極めて仕事を与えますし、少しでも直接話し合う時間を設けて、心を見せ合うことを大切にしています。

オンラインは非常に便利なツールですが、やはり目を見て話さなければわからないことがありますね。ちょっとした表情、声色、温度感を見逃さず、いかに自分の感性で、相手の感情や状況を「つかむ」かが大切になってくる。

叱る際も、人によって叱り方を変えています。一回とことん落ち込ませたほうがいいような復元力の高いタイプは、間違いを指摘したあとはあえて放っておく。

ほとぼりが冷めて失敗を忘れたころに、犯したミスについて再度指摘する。逆に、落ち込むことがマイナスになるタイプには、叱ったあとに細やかな声掛けをはじめとしたフォローを欠かさずに行なっています。

――人も馬も、性格によって方法を変え、本人が最も能力を発揮できるように育てていく。それはある種、相手に寄り添うことでもあるのですね。

私たちは機械ではなく、生き物を相手にしています。人の気持ちがわからない人間に、言葉すら話せない馬の気持ちを理解できるわけがありません。どんな人にも必ず存在する長所を見つけ、相手の気持ちにどれだけ視線を合わせ、寄り添えるかにかかっています。

なかには相性が合わなかったり、いくら叱っても理解してくれなかったりする人もいます。そういうメンバーに自分の気持ちをわかってもらうためには「根気」が必要です。

仕事として割り切るような意識しかなければ、それを保つことはできない。部下をもったのであれば、その人を"名馬"にするために懸命に育てていく。それが叶えられる唯一の手段は、「愛情」ではないでしょうか。

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