Voice » 経済・経営 » 「韓国経済はまるで養鶏場」LCC危機で露呈したビジネスモデルの限界

「韓国経済はまるで養鶏場」LCC危機で露呈したビジネスモデルの限界

2020年10月26日 公開
2022年10月27日 更新

渡邉哲也(経済評論家)

 

韓国のメイン空港に旅客が来ない

それでも日本の航空会社はだいぶマシ。世界的にみて最も大きなダメージを受けているのが、韓国の航空業界である。

韓国と言えば、同国の航空業界第5位のイースター航空の経営危機を忘れてはならない。2019年の日韓関係の悪化に伴い、韓国の航空各社は日本乗り入れ便を次々と運休させた。いわゆる「No Japan」キャンペーンである。

これにより国際線の半分近くを日本行きに頼っていたイースター航空は大きな痛手を負った。客室乗務員に最長4週間の無給休暇を取るように要請するなど、末期的状況に陥り、2019年にはチェジュ航空による買収が決定した(2020年7月に買収撤回)。

こうした状況に2020年のコロナ禍が重なり、韓国のLCC(格安航空会社)はどこも青息吐息だ。イースター航空の買収に動いたチェジュ航空も先が見えない状況が続く。

そもそもLCCは基本的に航空サービスのための資産がなく、オペレーティングリースで回している。とくにアジアのLCCは短距離便中心で、エアバスA321とボーイング737を中心とした小型機を運用している。

小型機による短距離便で日本を中心とした地方空港や、オープンスカイ協定に基づいて、地方間の空港便を飛ばしていた。日本の空港だと成田や羽田ではなく、たとえば清州―新千歳など、国内便と同様に地方空港間の便を中心に運用している。

LCCが担っていた役割が、もう一つある。韓国のメイン空港である仁川に旅客を集めることである。国際空港をハブにして、仁川から中長距離便で欧州やその他の地域に飛ばしていた。

ところが、コロナ禍で欧米に行けない。地方間の航空便は完全に止まっている。そうなるとLCCは収入がないうえに、リース代など運営コストばかりがかさむ悪循環に陥る。飛行機そのものも小型機なので、貨物機としての運用ができない。これだけ悪い影響があれば、LCCは存続そのものが厳しくなる。

人口5000万人程度の国の規模で航空会社9社は多すぎるのは明らかなのに、2020年春に2社が新規に参入予定であった。マーケットが飽和状態になって、共倒れの危機に陥るのは子供でもわかる理屈だろう。幸いと言うべきか、新規参入はコロナ禍で保留になっているが、韓国の自己破滅的な経済運営は国家全体を沈没させかねない。

同じ航空会社でもナショナル・フラッグキャリアの大韓航空はまだ自社保有機が多いが、アシアナ航空の場合、8割近くがオペレーティングリースなので相当苦しい。現在、アシアナ航空の買収交渉を進めている会社がいくつかあるが、交渉が頓挫すれば、アシアナ航空も破綻する可能性はある。

韓国の産業構造は養鶏場と一緒。儲かると思ったら、市場規模も考慮せずにぎゅうぎゅうに詰め込む。その結果、マーケット全体が健全性を失い、極端な場合、健康な鶏まで一緒に死んでしまうのである。

 

Voice 購入

2024年5月号

Voice 2024年5月号

発売日:2024年04月06日
価格(税込):880円

関連記事

編集部のおすすめ

「飛行機の飛ばし先がない…」韓国の反日感情が生んだ”自業自得”の経営難

渡邉哲也(経済評論家)

「韓国経済の崩壊」を確信した4つの理由

渡邉哲也(経済評論家)
×