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「コロナ倒産」を横目に右肩上がりを続ける企業の"ある特長"

2020年10月27日 公開
2022年10月27日 更新

渡邉哲也(経済評論家)

渡邉哲也

新型コロナウイルス関連の倒産(負債1千万円以上、準備中も含む)が600件に達した。(東京商工リサーチが10月19日に発表)。インバウンド需要も戻る兆しがなく、観光・宿泊業を中心に厳しい状況は続く。

だが、そんななか逆風を味方につけ右肩上がりを続ける企業もある。その違いは何か? 

本稿では、人気経済評論家・渡邉哲也氏の新著『世界と日本経済大予測2021』 (PHP研究所)より、2021年に日本企業を襲う「コロナ危機」の予測、不況時に生き抜くためのヒントについて解説する。

 

2021年、「ゾンビ企業」が一掃される

2020年上半期の倒産件数は3943件、前年同期比で1・4%の減少、負債総額は6316億円余で、前年同期比でじつに15・9%も減少している(帝国データバンク調べ)。

世間では「コロナ倒産」と面白おかしく騒がれているが、その件数も負債総額もじつは前年以下である。この理由は簡単で、新型コロナウイルス対策によるセーフティネットが機能しているからだ。

中小企業庁のセーフティネット保証制度を利用すれば、4号(突発的災害等により影響を受けている中小企業者)・5号(全国的に業況が悪化している指定業種を営む中小企業者)の該当者は、最高で4000万円まで無担保で融資が受けられる。

また、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付で実質無利子での融資を受けられ、これは民間の金融機関にも拡大されている。

雇用調整助成金(厚生労働省)で従業員の一時休業に対する休業手当等の一部助成、持続化給付金(中小企業庁)で中小法人等には最高200万円が給付される仕組みなど、さまざまな方法で中小企業を中心とした支援策が講じられている。

こうした保証・助成・給付等によって、本来、倒産するはずの企業が生き延びたというのが、倒産件数の前年比減につながった要因と推認すべきだろう。

もともと財務状況が悪く、いつ倒れてもおかしくなかった「ゾンビ企業・店舗」には本来、銀行は貸したくても貸せないし、保証協会も融資できない。

それがコロナ禍という特殊な事情で無担保融資や持続化給付金が出るといった「神風」が吹き、本来は潰れるべき会社が潰れないというおかしな現象が起き始めている。

 

後継者問題に悩む企業が一足早く倒産

これとは逆に、本来、続くはずだった店舗や企業が店じまいをするケースも散見される。桂小五郎(木戸孝允)ゆかりの料理旅館「幾松」(京都市中京区)の閉店がまさにそうだった。

また、ギリギリ赤字にならない程度だった老舗が、後継者不在問題も絡んで以前から廃業するタイミングを計っていたところに、コロナ禍をきっかけに、「余力があるうちに店を閉めてしまえ」と決断したパターンもある。

少子高齢化に伴う後継者不足は、コロナ禍とは別の大きな問題である。後継者不足の救済のために、政府は事業承継税制の制度を創設した。それまで親族だけだった事業承継の対象を、従業員等の第三者にまで広げた。

しかし、産業そのものが衰退している場合には、それでも後継者がいない会社も少なくない。

地方で人口が減っていて過疎化が進んでいる地域は、このまま事業を継続しても先細りしていくことは見えている。コロナ禍という経営的には強烈な逆風が吹き、今後も業績の回復が見込めないとなれば、事業を畳む決断を下すのも無理はない。

コロナ禍で、本来潰れるべき企業が救済され、まだ生き残れる企業が店じまいをした。経済の原則に反する事象が、コロナ禍によって引き起こされた。

その反動は2021年に本格化する。本来、倒産するはずだった会社が救済措置というカンフル剤で生き延びたとしても、一時的な対症療法にすぎない。

経済が正常に戻るにしたがって、倒産が相次ぐことは目に見えている。ピークは去ったとしても、その影響が中長期化すれば本格倒産の時代がやってくる。

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