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「コロナ倒産」を横目に右肩上がりを続ける企業の"ある特長"

2020年10月27日 公開
2022年10月27日 更新

渡邉哲也(経済評論家)

 

頭を使わない会社は淘汰されていく

業績悪化の話ばかりを耳にするが、この国難にあって前出の空調関連のように、利益を大幅に増加させている企業もある。

たとえば、調味料メーカーだ。コロナ禍で多くの人が外食を控えた結果、家庭内での食事機会が増えた。家庭で料理をつくる機会が増え、調味料メーカーの業績は好調である。

またマヨネーズを例にとれば、業務用スーパーなどでは1リットルサイズが、市販の400ミリリットルサイズと同じくらいの価格で売られている。

1リットルサイズのほうがお得なのは間違いないが、企業にとってはスーパーなどで売られている400ミリリットルのマヨネーズのほうが断然、利益率がいい。

ドレッシングにしても1リットルではなく、200ミリリットルのビン詰めのものが売れる。そのため、ビンの製造会社も儲かるという理屈である。

ちなみに、洗剤や消毒液の容器を作る機械メーカーは日本に2社しかない。もともと安定した供給があったが、コロナ禍で生産が追い付かなくなり、容器が足りなくなった。そこで消毒液メーカーが、自前で容器を作る動きがある。

プラスチックなどの容器はかさばるため、中国やベトナムから輸入するコストはそれなりにかかってしまう。まるで「空気」を運ぶために輸送料を払うようなもので、コストがもったいない。

ならば、自社で作ってしまえというわけだ。これまでは、単価が安いために設備投資をしても回収に時間がかかっていたが、需要が活況となれば、積極的に容器を内製する企業は増えていくだろう。

 

いまこそ「顧客第一」に立ち戻るべき

コロナ禍でも景気のいい企業の経営者は、「どうすれば儲かるか」「どこに新たな需要があるか」を真剣に考えている。規模の大小に関わらず、頭を使わない会社は消えている。当たり前と思われるかもしれないが、これが経営の本質とも言える。

負の側面ばかり捉えているようでは、商機は見えてこない。新型コロナウイルスで外出が控えられる、三密を控えるなどの状況で、「コロナ収束後は、業績が戻るはず」と待ちの姿勢でいる経営者は即座に淘汰されていくと思ったほうがいい。

衣食住関連や日用品関連など、つねに一定の需要がある産業の会社は、とりあえずいつもやっている仕事を忠実に継続していけば会社は潰れないし、何とかなってきた。

しかし、これからの時代、そのような消極的な姿勢では生きていけない。言い換えれば、新規参入し、工夫を怠る企業や何も考えない企業を淘汰していく絶好の機会でもある。

コロナ禍以降、近所の店舗を覗くと、常連がしっかりついている店は、極端な顧客の減少はないように見える。一方、通りがかりの客、飛び込み客を中心にビジネスをしているような店は、そもそも通りがかりの客が減っているため、その痛手をダイレクトに受けている。

こうした動きから、商売のあり方も見直さなければいけないと感じさせられる。通行量や客の年齢層、職層を綿密に分析し、価格も計算して、新規顧客の開拓を想定した経営計画やビジネスモデルは、ウイルスがすべて吹き飛ばしてしまった。

こういう緊急事態で重要なのは、「顧客を育てる」という中長期的なビジネスモデルであり、「顧客第一主義」がどの企業にも求められるのだ。

フリーのジャーナリストである筆者もそれなりに変革の波を受けている。コロナ禍で講演がほとんど中止になったが、そのぶん、リモート講演が増えた。

リモート講演に対応できる講師が少ないという事情もあったのかもしれない。講演数は減っているが、自宅でできる場合もあるし、都内の収録スタジオで全世界に向けて情報発信もできる。アーカイブ配信だってできる。

「コロナが……」と言って何もせずに漫然と過ごしている企業・人はどの世界にいても割を食うことになりかねないだろう。つまるところ、新しい行動様式に順応できる企業・人材から勝ち組になっていくに違いない。

 

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