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「中国だけは許さない」米大統領選挙の直後に起こる“変化”

2020年11月02日 公開
2022年10月27日 更新

渡邉哲也(経済評論家)

 

誰が大統領でも対中国の基本姿勢は変わらない

2020年11月のアメリカ大統領選挙の結果は、米中の対立に何かしらの影響を与えるだろう。市場の動きではトランプ大統領の再選が決まれば、株式とドルは上がり、バイデン氏が勝てば混乱含みの展開で、ドルも株も下がるとみられている。

では、大統領選挙後の対中国方針はどう変わるのだろうか?

本稿執筆段階では大統領選の結果は判明していないが、どのような結果になっても米中経済戦争が続くのは間違いない。共和党、民主党ともに議会が中国に対して強硬な姿勢を示しており、トランプ氏とジョー・バイデン氏、どちらが勝っても、スピード感に違いはあっても、中国と対峙する基本路線は保持されるだろう。

もちろん、根拠はある。

アメリカ議会は毎年通過する国防権限法を見てもわかるように、強硬な内容の法律を出し続けている。それに対して中国は強く反発する。この関係性は変わりようがない。

2019年にアメリカで制定された、香港で一国二制度が守られているか毎年検証することを義務付ける「香港人権・民主主義法」にしても中国は「内政干渉である」と反論。

また、香港の自治を侵害する団体や、それらと大きな取り引きのある金融機関に制裁を科す「香港自治法」、ウイグル族弾圧の責任がある中国の当局者に制裁を科す「ウイグル人権法」にも、中国は報復の構えを見せている。

一方、トランプ大統領の姿勢はかなり融和的である。もともと商売人だし、ディール(交渉)に徹しようとする。それに対し、議会は原則を押し通すから、民主主義を否定する中国に容赦しない。仮にトランプ再選が決まったら、対中国の強硬姿勢はむしろ過熱する可能性は十分に考えられる。

中国の人権問題は古くからある問題で、2008年の北京五輪でも西欧を中心に反対運動が広がったのは記憶に新しい。しかし、中国共産党のあり方、人権に対する考え方は今後も変わることはない。

米中の争いは経済戦争であり、覇権争いであるが、根本は価値観の衝突であって、文明の衝突であることを忘れてはならない。

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