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「大阪都構想」消滅…勝敗を分けたメディアの“反対派記事”攻勢

2020年11月04日 公開
2022年01月13日 更新

竹内謙礼

大阪都構想は否決された。その背景にあったものとは

《大阪府、大阪市の住民のみならず、日本中から注目を集めた「大阪都構想」の賛否を問う住民投票。政令指定都市である大阪市を廃止して4つの特別区に再編するというものだったが、結果は僅差で「否決」に終わった。

千葉県在住の竹内謙礼氏は、自身が執筆した記事内で日本維新の会の「選挙キャッチコピー」をWEB記事で大酷評したことをきっかけに、この住民投票に熱視線を送っていた。

そして同氏は、否決に終わり大阪都構想が消滅した今、今回の住民投票を振り返ると賛成派、反対派のそれぞれのメディア戦略が成否を分けたと分析する。》

 

住民投票に参加した人の年齢層は若くなったはずだが…

11月1日に行われた住民投票の結果、大阪都構想が否決された。

賛成675,829票、反対692,996票。その差約1万7000票。これにより大阪市の存続は決定。維新の会が掲げる大阪都構想は実現されることなく、消滅することになった。

当初、吉村知事の人気に推されて、大阪都構想も賛成多数で可決されると予想されていた。しかし、結果は惜敗。前回の統一地方選挙で維新の会が議席数を増やした現状を考えれば、「維新の会は評価するけど、大阪都構想は反対」というのが民意なのだろう。

もう少し今回の住民投票を数字で掘り返してみたい。

2015年の住民投票は66.8%の投票率だったが、今回は62.35%と4.45ポイント下がる結果となった。年代別の投票者数が分からないため、あくまで予測でしかないが、コロナ禍で投票場に行くことを敬遠した高齢者が多かったのかもしれない。

一方、18歳以上にも被選挙権が与えられたこともあり、前回の住民投票よりも、若い世代が投票所に多く足を運んだのではないかと思われる。

そう考えれば、仮説ではあるが、保守的な高齢者の投票数が減り、変革に抵抗のない若い世代の票が増えることになる。理屈的には賛成票が上回るはずだ。

しかし、結果的に大阪都構想は否決となった。要因は何だったのか?

 

ネットメディアは「反対記事」が多數派だった?


MIERUKA
(c)2020MIERUCA(ミエルカ) 2020年10月29日の調査より

ここでSEOの解析ツールMIERUCA(ミエルカ)の10月29日の調査データを元にして、大阪都構想の検索キーワードを可視化して検証してみることにした。

「大阪都構想」というキーワードと一緒に検索されている言葉は、「メリット」よりも「デメリット」のほうが、ボリュームが大きいことが分かる。そこから派生して「分かりやすく」「簡単に」というキーワードを検索しているユーザーが多いことから、多くの人が「分からない」という不安を抱えて、大阪都構想についてネットで調べている現状が伺える。

このデータからも分かる通り、大阪都構想について調べた際、ネット上の「賛成意見」と「反対意見」の量が、ある程度、投票の行方を左右した可能性は高いといえる。特に新聞購読率は減少傾向にあるため、若年層はネットの情報に感化されやすい環境にある。

そこで10月12日~10月31日までの期間に配信された大阪都構想関連のWebニュースを、「反対」「賛成」「中立」の3つに分類して、どのタイプのニュースが多かったのか調べてみることにした。

結果は下記の通りである。

・賛成記事/53本
・反対記事/101本
・中立記事/168本

最初に断っておくが、この調査はニュースのタイトルだけを見て判断したものを振り分けたものなので、記事の内容までは把握していない。また、仮に内容を把握できたとしても、反対記事なのか賛成記事なのかは個人の判断によるものなので、この数字自体が正確性に欠けてしまうことは了承して頂きたい。

しかし、それを加味したとしても、反対派の記事が賛成派の記事よりも多くWebニュースに掲載されていた可能性は高く、そこが勝敗の分かれ目になってしまったのではないかと考えられる。

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