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「中国への武力行使も」バイデン大統領誕生がもたらす“最悪シナリオ”

2020年11月11日 公開
2022年10月27日 更新

渡邉哲也(経済評論家)

 

民主党はディールが下手

もし、再選されたトランプ大統領の支持率が落ちれば、一気に戦争に踏み切る可能性があるだろう。仮に民主党のバイデン候補が勝つような場合にも、戦争は起こりうる。

歴史をひもとくと、民主党のほうが「暴力的な戦争」を引き起こしてきている。ベトナム戦争に本格介入したのはジョン・F・ケネディ大統領、第一次世界大戦に参戦したときはウッドロウ・ウィルソン大統領、太平洋戦争開戦時はフランクリン・ルーズベルト大統領、すべて民主党の大統領である。

結局、ディールが“下手”なのだ。そう考えると、いわゆる暴力的な平和主義者で、柔軟性に欠けるのは、トランプ大統領よりバイデン候補のほうだろう。実際、トランプ大統領在任中の4年間は大きな戦争を起こしていない。

また、ウイグル、チベット、香港問題により、米中の対立がたんなる経済問題ではなくなり、人権問題になっていることも、アメリカ側の態度が変わらない大きな理由になる。民主党はリベラルであり、人権問題で妥協することは支持者が許さないのである。

南シナ海で米中が戦闘状態に入った場合、短期で中国が敗北を認め、資本移動の自由などすべてを認めることがベストなシナリオ。そうなれば、中国共産党が支配する現在の中国とは異なる政治体制になる。国内の抑えが利かなくなって内戦が起これば、国際的なパワーを保持できなくなるだろう。

アメリカは中国が内戦に向かうよう戦争を仕掛けるつもりだ。その結果、ASEAN(東南アジア諸国連合)レベルまで国力を弱体化させ、そのまま世界の工場として維持させるのが狙いである。

日本人は戦争による国際問題の解決に慣れていないが、国際社会では当たり前のことである。

1982年、南大西洋上のフォークランド諸島をめぐるイギリスとアルゼンチンの軍事衝突が起こった(フォークランド紛争)。イギリス領であるフォークランド諸島に、アルゼンチン軍事政権が領有を主張し軍隊を上陸させた。

それに対し、英国のサッチャー首相は反撃して軍隊を派遣。最終的には英国が戦争で決着をつけた。戦争は最も簡単で、はっきりと問題解決ができる手段なのだ。

だが、現代のように大量の破壊兵器が存在する状況では、戦争は長期化できない。負ければ、国そのものを失いかねないからだ。だったら、敗北を早めに認めるしかない。

そう考えると、アメリカの考える武力を用いた対中シナリオも決して荒唐無稽なものではない。

 

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