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「自分のすべてをさらけだした」ジャルジャル福徳秀介がデビュー小説に懸けた“覚悟”

2020年11月16日 公開
2022年12月21日 更新

福徳秀介(お笑いコンビ「ジャルジャル」)

 

後ろ姿がかっこいい人は、人間としてもかっこいい

――登場人物一人ひとりが個性的ですが、人物像には家族の存在が影響しています。小西は他界した祖母、花は亡くなった父がそれぞれ生前に残した言葉を共有することで、互いの仲を深めていきます。

【福徳】どの言葉も自分で考えたんですが、あとから読み返して納得しちゃうものもありましたね。僕が気に入っているのは、花のお父さんが言った「嫌いな人が困っていたら、『ざまあみろ』と思うな。助けてあげなさい。そして『私に助けられて、ざまあみろ』と思いなさい」です。

ふと思い浮かんで書いた言葉やったんですけど、自分の日常に跳ね返ってくることがありました。

――タイトルにも使われている「今日の空が一番好き」は小西の祖母の言葉です。「空は毎日変わる。今日の空は今日しか見られない」。心に響きます。

【福徳】「今日の空が一番好き」ってワードとしてはあまりに単純で、一つひとつの単語を小学一年生でも理解できるじゃないですか。良い言葉やなと直感したけど、絶対すでに誰か言うてるわと思って、ネットで検索したんです。でも誰も使っていなくて検索にヒットせず、安心しました(笑)。

――「背中が素敵な人になりなさい」という言葉も印象的です。これは福徳さんが普段から意識していることなのですか。

【福徳】背中だけは取り繕えないというのが自分の考えとしてありました。髪型や服装はなんぼでも整えられるけど、背中は普段あまり見られないし、化粧もできない。その人のありのままの姿を表す部分だと思うんです。後ろ姿がかっこいい人は人間としてもかっこいい。先輩芸人を見ていていつも感じます。

――本作は小西と花の青春模様から、家族観や「大切な人の死」というテーマまで描いています。

【福徳】もともとは恋愛話100%で書くつもりだったんです。でも原稿を何回も直してペンを進めているうちに、長年、内に秘めていたものが表に出てきてしまって。僕自身が人生で経験した最も辛い出来事があるのですが、気づいたらそれを物語としてアウトプットしていました。

恥ずかしい話、物語の終盤はカフェで泣きながら書いていました…(笑)。あとから考えたら、ちょっと熱くなりすぎましたね。このまま世の中に出していいものかと思うくらい、自分のすべてをさらけ出したつもりです。

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