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トランプ政権は誰が生み出したのか? 世界史から学ぶ「シーソーゲーム」



2020年11月30日 公開

茂木誠(駿台予備学校世界史科講師)

ホワイトハウス

トランプ氏ほど、毀誉褒貶の激しい人物も珍しい。今後も、彼は我々の記憶に強烈に残るだろう。時代は、なぜトランプという人物を生み出したのか。時事問題にも詳しい大人気世界史科講師の茂木誠氏は、こう解説する。

※本稿は、茂木誠『世界の今を読み解く「政治思想マトリックス」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

 

グローバリズムの腐敗と衰退

ドナルド・トランプは、「衰退したアメリカの製造業を守るため、中国製品に高関税をかける。労働者の賃金を守るため、不法移民を取り締まる!」と公約し、2016年の大統領選挙で当選しました。トランプは明確な「反グローバリスト」です。

なぜ、トランプが登場したのか。きっかけは、グローバリズムの限界です。遡ること、冷戦終結後の1990年代。民主党のクリントン政権時代は、グローバリズム全盛の時代でした。

ニューヨークのウォール街にとって最高においしい時代だったと言えます。彼らは日本に対しても、市場開放だの、構造改革だのを要求してきました。ウィルソン時代に始まるアメリカのグローバリズムの頂点が、クリントン政権時代に訪れたのです。

クリントン政権と金融資本は、ズブズブの関係にありました。クリントン政権の財務長官だったロバート・ルービンという人物は、ニューヨーク最大の金融機関であるゴールドマン・サックスのトップでした。

日本で言えば、財務大臣の椅子にメガバンクの◯◯銀行のトップが座っているようなものです。その慣行は、政権が変わっても続いています。

共和党ブッシュJr.政権は、「9・11同時多発テロへの反撃」として中東へ派兵し、アフガニスタンのタリバン政権を攻撃し、さらには、イラク戦争を始めました。共和党としては例外的なグローバリスト政権だったのがブッシュJr.です。

しかし、グローバリズムが勝ち続けることはできませんでした。政権と金融資本のズブズブの関係に終止符を打ったのが、リーマン・ショックです。過剰なマネーが投機対象を求めて住宅ローンに流れ込んだ結果、住宅バブルの崩壊によって回収不能な不良債権化したのです。

ウォール街の巨大金融資本リーマン・ブラザーズ社を破綻させたので、「リーマン・ショック」と呼ばれます。ウォール街の連鎖倒産を避けるために莫大な公的資金(税金)が投入され、米国民の怒りの火に油を注ぎました。

「草の根保守」の庶民が武器としたのは、オバマ政権時代に普及したインターネットとスマホです。グローバリストたちがマスメディアを使って世論を操作することが難しくなり、ネットが世論を動かす時代が到来しました。

大手メディアがこぞって「ヒラリー・クリントン優勢」を報道していたにもかかわらず、独自のネット配信を続けたトランプが逆転勝利できた2016年選挙は、新しい時代の到来を告げるものでした。

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