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「英国の首相になりたい!」米国大統領ウィルソンの奇天烈な青春時代

2020年12月01日 公開

倉山満(憲政史研究家)

ウッドロー・ウィルソン

自由主義・民主主義・国際主義による政治体制の変革を自国の使命と考える「ウィルソン主義」の提唱者ウッドロー・ウィルソン。平和の伝道師のごとく語られる第28代アメリカ大統領の正体は、しかし「大悪魔」だった。自らを神と一体化させ、全世界に不幸を招来した男の来歴を明らかにする。

※本稿は、倉山満著『ウッドロー・ウィルソン 全世界を不幸にした大悪魔』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです。

 

自分をキリストと思い込む

精神分析の創始者として知られる神経病学者、ジグムント・フロイトは、トマス・ウッドロー・ウィルソンの生涯にわたって父親の存在とその関係が人生全般に顕著な影響を及ぼした、と診断しています(S・フロイト/W・C・ブリット、岸田秀訳『ウッドロー・ウィルソン 心理学的研究』紀伊國屋書店、1969年)。

フロイトによれば、トマスにとって父親は神でした。牧師として説教壇に立つ父ジョゼフは演説が巧みで、トマスは父とその説法から言葉を学んでいます。神の言葉を話す父を神に見立てたので、その子である自分は神の子キリストであると思い込んだ、そういう子供でした。

フロイトの精神分析によれば「父と自分=神とキリスト」とのトマスの思い込みが生涯変わらず、行動や志向、周囲の人間関係に至るまで、すべてその原理が基準になっていたという見立てです。

前出のフロイトによる『ウッドロー・ウィルソン 心理学的研究』は、ウィルソン大統領の死後、未亡人が生きている間は出版を控えたという、いわく付きの本です。

ウィルソンの変わった思考回路が幼少期で終わっていてくれれば、その後の人類の不幸は無かったのですが……。

 

人類史上最大の「中二病」

空想がちで信仰復興運動にのめり込む十代半ばを過ごしたトマスは、1873年のある日、「わたしの心に神の恩寵のしるしが現われはじめた」と告白するのです。人類史上最大の「中二病」が発症しました。

「中二病」とは、中学2年生ぐらいの思春期にありがちな言動で、現実と空想が混然としたまま大言壮語してみたり、自己愛の陶酔を公言してみたりする様子のことです。

たとえば「俺は世界を支配する!」とか「俺は神だ!」とか。小学生ぐらいの子が言っているうちは可愛いけれども、度が過ぎれば親が諭してしっかり教育するものです。

ところが、この頃のトマスは16歳で、今の日本なら高校生ぐらいの年頃です。父の教会にやって来た若い牧師見習いに傾倒し、教会の勉強会に熱心に出席しています。そして誰もトマスを止めません。

この頃から、父ジョゼフの教会が発行する『ノース・カロライナ長老派教会』紙の制作や雑用を手伝い始めます。言葉に対するこだわりが深まっていき、父が説教壇に立ち教会に集まった聴衆に神の言葉を説く姿を追うように、トマスも演説や討論にハマっていきます。

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