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鬼滅の刃「炎」の作曲者・梶浦由記さんが痛感する「アニメの大切な役割」



2021年01月15日 公開

梶浦由記(作曲家・作詞家)

 

アニメは想像力や道徳心を養う

――新型コロナの影響で、エンタメ業界は深刻な状況に置かれています。梶浦さんが2020年夏に予定していた「Yuki Kajiura LIVE」も翌年に延期となりました。いまの世の中の状況をどうご覧になっていますか。

【梶浦】幸い、私の仕事の大部分を占める作曲はこれまでどおり行なえています。ただ、興行を生業にしている方にとっては本当に大変な状況です。リアルなライブの開催には大勢の人たちが関わるので、一度止めてしまうと、多くの人に影響が及んでしまう。

私がライブのリハーサルで利用していたスタジオのなかにも、コロナによる打撃で閉鎖した所もあります。「いまは我慢して落ち着いたらライブをやろう」といっても、そのときにはもう開催できる環境がないかもしれない。いまでさえギリギリの状況ですが、これから先にもっと厳しい事態にならないかと心配しています。

――コロナ禍でエンターテインメントの力を再認識した人も多いでしょう。音楽の可能性をどう見ていますか。

【梶浦】私は、音楽は基本的に娯楽だと捉えています。だからその役割はつくり手ではなく、受け取る側が決めることだと思うんです。「音楽には人を絶望から希望に導く力がある」とかっこよく語れたらいいのですが、とてもそうとは言い切れません。

希望は音楽自体ではなく、その先にある人の力です。好きなアーティストの楽曲によって救われた人がいるかもしれないし、一方で人生に大して役に立たない人もいるかもしれない。音楽の力を信じているというよりも、そう信じる人の心に音楽が作用するのでしょう。

私自身、いままで生きてきたなかで幸せの記憶はすべて音楽の中にありました。音楽を愛する人たちは聴き続けることで、鉱脈からお宝を掘り当てるように、自分の好きな楽曲を探している。

だから私の音楽も、たとえ万人に受け入れられなくても、音楽の力を信じる人に届けばいい。そういう人たちが私の楽曲に出合ったときに感動してもらえるように、一つひとつに思いを込めてつくっています。

――アニメは日本が世界に誇るべきコンテンツです。そこから物語とともに音楽を届けられることをどう考えていますか。

【梶浦】じつは私はもともと、あまりアニメに親しんできませんでした。一方で昔からオペラが好きで、壮大で大げさな音楽に触れてきました。

作曲家になる前にJ-POPでバンドデビューしたのですが、そこでは私が愛するオペラのような楽曲は求められていなかった。作詞や作曲をするようになってからも、壮大で悲劇的な音楽はつくってはいけないものだと思っていました。

そんなときにアニメ楽曲の制作を依頼されたのですが、そこに私がやりたかった音楽があったのです。大げさかつ重厚で壮大な曲が物語とリンクし、人びとに感動を与える。

英雄が死に、ヒロインが泣き叫び、悪役が高笑いするような音楽って、いまやオペラかハリウッドかアニメにしかないのではないでしょうか。自分の求めていた音楽をつくって届けられるアニメに出合えて、本当に良かったと思っています。

――2021年公開の『劇場版 ソードアート・オンライン プログレッシブ』の音楽も担当されます。世界中のファンが公開を心待ちにしていますが、どのような音楽を届けたいですか。

【梶浦】ちょうどいま(2020年12月中旬)、必死に楽曲を制作しているところです(笑)。今回の映画は「ソードアート・オンライン」シリーズの原点に立ち返ったような作品ですから、思う存分ワクワクしながら観て、聴いてもらいたいですね。

――梶浦さんたちが携わる音楽の後押しもあり、アニメはいまや、幅広い世代が親しむ日本の文化になりましたね。

【梶浦】アニメには、子どもの想像力や道徳心を養う要素もあります。物語に触れることは、相手のことを思いやる力を育てるのに最も有効です。

それこそ「鬼滅の刃」に触れてきた子どもたちのなかに、「炭治郎(同作の主人公)みたいに仲間を大事にしよう」と感じる子もいるでしょう。諸外国と比べて日本では宗教や道徳の教育が不十分ともいわれますが、その役割の一端をアニメが担っているのかもしれません。

日本人の心を豊かにし、世界中から評価されるアニメに、これからも私は音楽で関わっていきたいと思います。

 



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