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論文を書かない研究者も“クビ”にならない…問題をかかえる日本の「大学教育」



2021年02月15日 公開

小松和彦(国際日本文化研究センター名誉教授・元所長)

 

比較文化論で複眼・多眼的視点を身につけよ

――世界に目を向けると、新型コロナはいまだ猛威を振るい、「自国第一主義」の風潮がむしろ強まっているように見えます。不透明な国際情勢のなかで、我が国は何をすべきだとお考えですか。

【小松】毎年のように成長を謳歌した経済大国だった時代の価値観から脱却し、現実を直視しなければなりません。日本が今後、一国だけで生きていくことは困難であり、ウルトラナショナリズムに陥らないようにする必要があります。そのために不可欠なのが、比較文化論の研究推進と普及です。

文化研究の見方は二つあって、一つは単一化・標準化です。たとえば「先進国」と「発展途上国」という言い方は、発展途上国は成長して先進国並みに近づくのが望ましい、との前提に基づいた発想です。いわゆる「西洋化」を是とする考え方ともいえます。

これとは別の見方が比較文化論であり、地球上に存在するあらゆる文化の多様性に着目する手法です。ある国と日本の共通点や相違点を考察していると、その背景を知るために、自ずと自国の歴史にも関心が向くでしょう。

日本の歴史という内を知り、他国の文化という外も知る。そうした複眼・多眼的な視点を国民がもつために、比較文化論の研究をさらに推進すべきです。

――たとえばアメリカや中国の文化と日本のそれを比較したならば、日本文化の柔軟性や多様性がより浮き彫りになるかもしれません。

【小松】日本の妖怪研究は民俗学から派生し、現代の大衆文化であるアニメや漫画にも繋がっています。漫画・アニメともに大ヒットした『鬼滅の刃』を、民俗学の系譜から考察することも可能でしょう。エンターテインメントは日本経済の一端を担うのみならず、人びとの心を豊かにする重要な存在です。

日本アニメのファンが海外に数多くいるように、外国の日本研究者と話をすると、漫画やアニメについて日本人より詳しいことも少なくない。デジタル媒体がこれだけ発達している時代ですから、人の往来がなくとも各国の大衆文化に触れ、研究が進められます。

日本が誇るエンタメとそれに関連する学問研究をうまく融合すれば、日本の強みがさらに増すでしょう。

 



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