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「OECD最下位の日本」も…デジタル化の周回遅れを取り戻すチャンスが来た



2021年03月10日 公開

河野太郎(行政改革担当大臣)&宮田裕章(慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室教授)

河野太郎&宮田裕章
(写真:まるやゆういち[左]、吉田和本[右])

DX、危機管理、政治コミュニケーション――。新型コロナ禍で日本の課題が浮き彫りになった。各国でワクチン接種が進むなか、日本の戦略とは。行政・規制改革担当とワクチン接種担当を担い、「次期総理に最も近い政治家」と呼ばれる河野太郎大臣と、科学を駆使した社会変革を実践するデータサイエンティスト・宮田裕章氏が特別対談(聞き手:亀井善太郎[政策シンクタンクPHP総研主席研究員])。

※本稿は『Voice』2021年4⽉号より⼀部抜粋・編集したものです。

 

アメリカ型か、ヨーロッパ型か

――(亀井)宮田さんは3月18日に著書『データ立国論』(PHP新書)を上梓します。本書はデータを駆使した社会変革を提起する内容と伺っていますが、行政・規制改革担当大臣として改革に臨む河野大臣にとっても親和性の高い議論だと思います。

【河野】宮田さんはかねてより、「データの共有」についてお話しされていますよね。私はその議論にとても惹かれました。通貨や石油は簡単にはシェアできないけれども、データはそれが可能である。

そもそもデータは、他者と共有しなければ価値を生まない。そうした宮田さんの鋭い視点に触れて、大いに驚かされたものです。世界を見渡せば、たとえばアメリカは企業が莫大なデータを囲い込み、利用することで儲けています。

一方でヨーロッパは、国民一人ひとりにデータ利用の了解を得ながら運用を進めている。この反対が中国で、共産党がデータを独占していることは周知のとおりです。

アメリカ型や中国型は、統治者の違いはあれども国民が強権的に押さえつけられているので、全面的に肯定しにくい。ではヨーロッパ型が良いかといえば、理念は頷けるものの手続きが煩わしい。では、我が国はデータをどう扱っていくのか。私は、諸外国とさまざまなデータを共有して、国がもつ全体の価値を上げていく道を考えています。

データを政府や一部の企業が囲い込むのではなく、オープンにして差し出す代わりに、他国からも提供してもらうことで、双方が得られる富を増やしていく。その手法を進めることで、新たなかたちの社会が始まる気がしています。

 

データは共有してこそ価値が生まれる

日本はデータ管理・運用において、国際的に周回遅れだとしばしば指摘されるけれども、欧米や中国とも異なる独自の突破口があるはずです。

たとえば、2019年6月に大阪で開催されたG20において、日本は「Data Free Flow with Trust(DFFT、信頼性ある自由なデータ流通)」という、自由で公正なデータ流通の実現をめざすコンセプトを提唱し、多くの参加国の賛同を得ました。国際的なデータ管理におけるルールメイキングでリーダーシップを発揮するために、いまこそ日本外交の手腕が問われています。

【宮田】まさしく、大臣に仰っていただいた部分が、私が提唱する「データ立国」の本質です。石油や通貨などの消費財は、有限であるからこそ各国が排他的に所有してきました。

ところがデータの場合は、一人だけが抱えるよりも一万人で共有したほうが、その全員にメリットがある。つまりは、「コ・クリエーション(共創)」で価値を生み出すわけです。

象徴的なのが、河野さんが担当大臣を務める、新型コロナウイルスのワクチン開発の分野でしょう。当初はワクチンが開発されるまでに3、4年は要するといわれていましたが、遺伝子配列が全世界に公開されたことで、ウイルスがなくてもワクチンをつくれるようになりました。すでに一部の国では接種が開始されています。

時を遡れば、新型(鳥)インフルエンザの世界的流行を受けて、2008年にGISAID(Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data)というグローバルな科学イニシアチブが設立され、インフルエンザワクチンデータが世界で共有されるようになりました。

このときに築かれたネットワークが、今回のコロナでも大きな役割を果たしています。世界が苦境に陥るなか、データ共有のメリットを人びとが実感できたことは、人類にとっての大きな一歩です。

【河野】一方で、もちろん懸念も存在します。たとえば、ワクチンを作成する段階ではデータを各国でシェアしていたのに、いざ完成したらそのワクチンをヨーロッパ諸国で取り合いになった現実もあります。データの時点では皆で共有できるにもかかわらず、消費財になった途端に奪い合いになる。歯がゆい現実です。

【宮田】たしかに悩ましい問題ですが、私は、運用を工夫すれば乗り越えられると考えます。イギリスの製薬会社アストラゼネカは、もともと自社のワクチン生産能力が足りなかったこともあり、日本には自国でワクチンをつくれるようにノウハウを提供してくれました。

彼ら自身が掲げるサステナビリティ(持続可能性)を実現するためでしょう。もしワクチンの製造方法を秘匿していれば彼らは莫大な利益を得たでしょうが、自社の理念に基づき、ノウハウを共有したわけです。

もう一つ例を挙げれば、台湾は新型コロナが流行し始めたころに、速やかにマスクの在庫をデータで市民に公開しました。持病をもつ人は一カ月分、健康な人は二週間分の在庫を保証すると明示することで、人びとに安心感を与えたのです。

これから日本でもワクチンの接種が本格化していきますが、必ずしも最初の段階で総量を確保する必要はありません。データを活用すれば、在庫を段階的に補充しながら接種していくことができます。ワクチンを届けるタイミングや手法を工夫することで、より効率的、かつ排他性を避ける運用ができるはずです。

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