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「今を過度に恐れることはない」コロナ禍で重要な“データを解釈する技術”



2021年03月20日 公開

安宅和人(慶應義塾大学環境情報学部教授・ヤフー株式会社CSO)

データリテラシー

COVID-19(新型コロナウイルス)のパンデミックにより、数字やデータへの向き合い方が問われた。我々はいかなるリテラシーを身につけるべきなのか。慶應義塾大学環境情報学部教授でヤフー株式会社CSOの安宅和人氏が伝授する。

※本稿は『Voice』2021年4月号より一部抜粋・編集したものです。

 

「対策病床の開拓」は臨機応変に

COVID-19(新型コロナウイルス)が日本に上陸したのは2020年1月。早くも一年以上が経ったことになる。感染拡大初期は未知のウイルスだったが、次第に対応の方策が見えてきた。

世界が引き続き「withコロナ」状況にあるなか、僕たちはこの一年から何を教訓として、未来の危機を乗り越えるための糧とするべきだろうか。まず、当面の「withコロナ」と呼ばれる状況にどう対処すべきかを考えてみよう。

このたびのパンデミックは、日本のさまざまな課題を浮き彫りにした。その一つに、データへの向き合い方が挙げられる。毎日のように「東京都の新規感染者数、X人」と数字が発表されるので、こまめにチェックして一喜一憂している方もいるかもしれない。

しかし、日々の新規感染者数はそれほど重要な数字ではない。気にするべきは、現在の感染者数が医療キャパシティに収まっているかどうかである。ちなみに、感染症対策病床数はこの一年で10倍以上に増えており、人工呼吸器の調達も急速に進んだ。

これも本誌2020年7月号で指摘したが、そもそも特定の感染症が沈静化する道は基本的に二つしかない。特効薬の登場か、集団免疫の形成である。COVID-19の特効薬は、いまだに開発されていない。一方で十分な集団免疫を形成するためには、ワクチンか自然感染が必要になる。

日本ではいま、国民にワクチン接種を普及するために政府が対応に当たっている。しかし残念ながら、対応や展開が諸外国に比べて明らかに遅れている。特別措置を打ち出して、早急に可能な限り多くの国民に打つべきだ。

中東のイスラエルは、人口が約900万人と比較的少ないとはいえ、2月上旬の時点で国民の約四割がCOVID-19のワクチンを、少なくとも一回は接種しているという。

ワクチン接種を急速に展開する重要性は当初からわかっていたことであり、早期認可・展開・配布の仕組みはできていなければおかしい。日本でも政治的な意思決定がボトルネックにならない限り、迅速なワクチン接種は可能なはずだ。

万一、もう一つの自然感染アプローチを推進するにせよ、当然、感染を野放図に放置するわけにはいかない。先ほど述べたように、医療キャパの確保が必須なのはそのためだ。イメージが湧きやすいように、医療提供体制の具体的な公表データをみてみよう。

「COVID-19Japan 新型コロナウイルス対策ダッシュボード」の2月7日時点の数字をみると、COVID-19の対策病床数が57,780床、患者数が32,739人。対策病床使用率は56.6%だ。この数字を受けて、「対策病床の半分以上が埋まっている」と懸念する方もいるだろう。

しかし、よく考えてみてほしい。日本の全国の総病床数は約160万床である(厚生労働省 医療施設動態調査 令和2年11月末概数)。すなわち、仮に対策病床がすべて医療機関にあるとしても、日本全国のベッドのうち3.6%しかCOVID-19の対策に使われていないのだ。

日本で圧倒的に対策病床の開拓が進んでいない何よりの証拠だ。仮に患者が激増したとしても、現在6万床弱しかない対策病床数を思い切って一桁上げることは非現実的な話ではない。

日本では70年ほど前まで、感染症の一つである結核が死因の一位あるいは二位だった。そのため、かつて主要な病院の多くは結核の隔離病棟を抱えていた。COVID-19でも展開次第では、対策病床の確保が急務になる。

政治が一定の強制力をもって対策病床を開拓する代わりに、対策を講じた病院、対応するスタッフにはお金が回る仕組みをつくる。必要な法整備を政治家が覚悟をもって進めなければならない。行動抑制でCOVID-19が沈静化しない場合、臨機応変に病床対応できるかが問われている。

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