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「今を過度に恐れることはない」コロナ禍で重要な“データを解釈する技術”



2021年03月20日 公開

安宅和人(慶應義塾大学環境情報学部教授・ヤフー株式会社CSO)

 

データは「分母」に注目

一方で、現下のパンデミックにおいて毎日の新規感染者数に右往左往しているように、社会全体として数理・データリテラシーが欠けているように思うことが多い。

先ほど対策病床数の例を紹介したが、データを解釈する際には分母を見たうえで分子の割合を見なければならない。定量的な数字を扱うときは、こうした割合による「比較」が肝である。

薬の服用を例に考えてみよう。「X歳未満の子どもは一錠、X歳以上の大人は二錠」と記載されている薬剤をよく見かけると思うが、薬剤とはもともと、動物を用いて実験する際、体重当たりでの服用量を導き出して開発されている。

つまり、年齢というより、「体重Xkg未満は一錠、Xkg以上は二錠」と、身体の重さを基準とするのが本来望ましい。「比較で考える」とは、たとえばこのように考えることができるかということだ。

では、COVID-19に関する数字はどうだろう。あえて新規感染者数を事例として扱うならば、僕たちはたとえば「東京都の新規感染者数700人」などの実数に注目してしまいがちだ。しかし当然、人口当たりの発生頻度も見なければ意味がない。

東京都の人口は約1,400万人だから、一日の新規感染者数が700人だった場合、その割合は「二万人に一人」となる。ちなみにこの数字は、主要な欧米諸国より一桁低い。日本は国際的に比較しても、感染拡大を明らかに抑えられている。

しかし、菅政権のCOVID-19対策に対しては、相変わらず批判の嵐が止まない。僕は本来であれば、これらの国内外比較と医療キャパを見せ、「現在の状況を過度に恐れることはない」と堂々と構えるのが為政者の在り方だと思う。

実際、福岡市の高島宗一郎市長はファクトを丁寧に紐解いたうえで、COVID-19に対して毅然とした姿勢を示し、市民から信頼を得ている。

「国民にあらぬ誤解を生むのは、煽情的な報道を続けるメディアに責任がある」。そんな意見も少なくないだろう。たしかに一理ある指摘だが、根本的には政治家および国や自治体によるリスクコミュニケーションの問題だといえる。

国民の代表である政治家自身が数理・データリテラシーを備えれば、メディアもそれに負けじと追いついてくる。ファクトベースで現状を示すのが政治家の務めであり、国民の側も定量的に物事を考える思考を鍛えなければならない。

 



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