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withコロナで業態は変えるべき? ビッグデータは「都心から郊外へ」を示した

2021年03月22日 公開
2022年02月22日 更新

安宅和人(慶應義塾大学環境情報学部教授・ヤフー株式会社CSO)

 

業態変革を進めるべき

開疎化というトレンドはわかった。では、僕たちは「withコロナ」状況で、実際にいかなる行動を起こすべきなのか。個人が具体的にできるレベルでいえば、まず各自がCO2濃度計測器をもつことが有効だ。

室内のウイルス濃度低下のために換気が推奨されているが、CO2濃度がいかに開放された空間であるかを測る指標となるからだ。外気と同程度の450ppm程度までに抑えられていれば、特段の問題はない。一方、600ppm前後を目に見えて超えると「空気が澱んでいる」といえる。

なお都心のオフィスビルでCO2濃度を計測してみると、人が普通に働いている場合、1000ppmを超えていることは珍しくない。いまやマスクの着用が「ニューノーマル(新常態)」となったのと同様に、CO2濃度の計測が当たり前になるべきだ。

開疎化の実践は個人のみならず、もちろん企業や国も推進に注力すべきだ。昨今は「コロナ不況」とも呼ばれるが、とくに打撃を受けている業態は、飲食店など顧客にリアル空間で向き合う必要があるサービス業に集中している。そうした業態がうまく営業を回せるような刷新を、国や、都市部をもつ自治体はぜひ促すべきだ。

たとえば、疎密コントロールをしたうえで、焼肉屋のように平均一時間に10回以上空気を入れ替え、空気循環を劇的に高める。また海岸や河川敷、公園の近く、ビルの屋上といった開疎空間での店舗オープンや移転を優遇し、規制を緩和する。

地下にある店舗は屋上や路上などへ誘導する。先ほどのCO2濃度計測器を各店舗に常備のうえ外からも見える化させ、一定の濃度基準以内に抑えられるための対策を促すなどだ。

開疎を実現している店をピックアップした「開疎飲食店サイト」が出てきてもよい。「食べログ」「一休」などのグルメサイトで、各店舗のトップ画面に「開疎マーク」をつけるのも面白い。いますぐにできる対策に関しては現場が実践し、一定の資金と時間が必要な改革は国や自治体が後押しする必要があるだろう。

そして店舗の移転などにとどまらず、業態そのものの転換も進めるべきだ。以下に見るCOVID-19を生み出した背景を考えれば、次なる感染症は10~20年スパンで必ず再び訪れる。

いま変革を行なわなければ、同じ轍を踏んで「あのときやっておけばよかった」と後悔するのは目に見えている。市民は適切な選択肢さえあれば動く。誰が選択肢を生み出すのかといえば、世の経営者や政治家であることはいうまでもない。

 

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