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気候変動,パンデミック,大地震…データが示す「コロナの先にある未来」



2021年03月24日 公開

安宅和人(慶應義塾大学環境情報学部教授・ヤフー株式会社CSO)

ヒューマン・サバイバル

COVID-19(新型コロナウイルス)のパンデミックから1年以上が経った。我々は引き続き「withコロナ」の状況に置かれるが、慶應義塾大学環境情報学部教授でヤフー株式会社CSOの安宅和人氏は、そもそも人類は50~100年スパンで見たときに存続の危機に瀕しているという。どういうことなのか。「ヒューマン・サバイバル」の術について提言する。

※本稿は『Voice』2021年4月号より一部抜粋・編集したものです。

 

COVID-19の次に待ち受ける難題

地球上の動物の質量構成比

いま僕たちは「withコロナ」状況に直面しているが、そもそも人類は100年後に存在しているかも危うい状況にあるといわざるをえない。どういうことだろうか。順を追って説明しよう。

現在、地球上の大型動物の質量は96%が人間と家畜で構成されており、野生動物は残りの4%にすぎない(Bar-On et al.PNAS June 19, 2018 115(25)6506-6511、図表参照)。

野生動物と人間の生活空間の近接がCOVID-19やAIDS、エボラほかの感染症が頻発する背景にあることは明らかだ。ちなみに、人口が4~5億人程度だった2,000年ほど前は、現在とは逆に人間と家畜は大型動物全体の2~3割程度だったと推定される。

結果生まれるCO2は、メタンとともに温暖化の原因とされている。IPCC第五次評価報告書(2014年)の予測によれば、地球の気温は2100年末には、最悪の場合、4.8℃上昇する。

温暖化の後に待ち受けるものとは何か。それは災害の多発、食料危機であり、また気温、海表面の上昇に伴う生活空間の大きな見直しなどだ。いまのまま温暖化が急速に進めば、現在の居住空間の多くに人類が安定的に住めなくなる環境が近い将来訪れてもおかしくないのだ。

そもそも人類は、氷河期までは急激な気候の変動を幾度となく経験して、現在に至っている。ホモサピエンスが現れて15万年以上が経つが、人口が増え、人類文明が発展してきた過去1万2000年は、氷河期が落ち着いた例外的な安定期だった。

人類は現在、地球により生み出される速度の10万倍程度の速さで化石燃料を消費している。加えて、3℃気温が上がったときには1万2000年前から凍結してきた永久凍土が解けることが予想されており、人類をこれまで悩ましてきたあらゆる感染症の病原体が解け出てくる可能性が高い。

環境省が2019年7月に公開した「2100年 未来の天気予報」(新作版)によれば、2100年には東京都の最高気温は43~44℃となり、台風の最大瞬間風速は90mに上るという。

熱波だけでも深刻な問題だが、風速90mを時速に変換すると324km、新幹線の最高速度並みの速さだ。そんな台風が列島に襲来すれば、多くの民家は簡単に倒壊する。電線の多くはズタズタになり、電柱の倒壊も起きる。農地の被害も甚大だろう。

ダメージの規模だけでなく、復旧の時間も想像以上のものになる。食料供給に甚大な問題が発生するだけでなく、仮にこれだけのことが起きれば日本起点で世界的な不況、恐慌に陥ってもおかしくない。類似のリスクは全世界的に高まっている。

以上見てきたとおり、人間活動による温暖化から想定される気候変動とその帰結を考えれば、人間一人当たりの環境負荷を劇的に下げるか、人間の数を劇的に減らすしか答えはない。

本題から外れるが、少子化は当然のように社会にとって致命的であるかのようにいわれるものの、現在、中国も含めて主たる先進国では(移民により増大が続く)アメリカを除き人口調整局面に入っている。これら主要国での生産年齢人口の頭打ちは当然で、この状態が当面続くことは基本確定的だ。

また現在、地球に対する人間の環境負荷はきわめて高く、日本の一人当たりCO2排出量が仮に現在の半分のフランス並み(年間約5トン/人)になったとしても、地球の森が吸収できるのはせいぜい50億人程度にすぎない。

したがって、50年後、100年後の地球、人類、そして自分の子や孫たちの未来を考えるのであれば、人口はいまのトレンドどおりに減るのが正義。経済視点で本当に解くべき課題は、強引にトレンドをひっくり返し人口を増やすことではなく、人口減少下においてどのように(財政破綻しないように)経済規模を維持し続けるかだ。

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