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「アメリカの弱さ、中国の強さ」マルクス・ガブリエルが考える分断の根源

2021年05月03日 公開
2022年10月06日 更新

マルクス・ガブリエル(ドイツ・ボン大学教授)

マルクス・ガブリエル

グローバルな「友愛のポリティクス」

では、人類はどのようにしてグローバルな協力体制を築き上げれば良いのでしょうか。

例えば米中関係についていえば、米中以外の国々がグローバルな協力体制を構築し、それがアメリカと中国のパラダイムになれば良いのです。他の国々が協力体制を作らなければ、グローバルな協力が必要だと米中を説得することはできないでしょう。

仮にEUと日本が、アフリカを対等な存在と捉えるアフリカ戦略を作ったとします。アフリカを搾取しようなどと考えず、発展途上国とも考えない。アフリカを人類の一部と捉える。素晴らしいことです。

アフリカを対等なパートナーであり友人であると考えると、これまでと違う形の協力関係が生まれるかもしれません。そうすると直ちに倫理的経済の優位性が試されます。中国がすでにアフリカに進出しているからです。

これは面白い実験になるでしょう。EUと日本は、アフリカ諸国に中国よりもずっと良い協力モデルを提示することにより、アフリカにおける中国の影響力を排除できるかもしれません。

このように、私はグローバルな協力の可能性は大いにあると思っています。しかしそれは普遍的な倫理観に根付いた協力でなければなりません。それ以外に国際社会の協調はありえません。

哲学者のジャック・デリダはこれを「友愛のポリティクス」と呼びました。私が提案しているのは、哲学とビジネスと政治の間の友愛も含む、グローバルな「友愛のポリティクス」です。それぞれの世界が互いを貶め合うものであってはいけません。

 

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