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冷戦の敗北に学んだロシア、中国…「新冷戦」は日米欧の大きな試練に

2021年05月07日 公開
2022年01月26日 更新

グレンコ・アンドリー(国際政治学者)

 

「トランプが中国を倒してくれる」という過大な期待

その試練を乗り越えられるかどうかは、自由・民主主義諸国の努力次第である。私は、全力を尽くせば自由主義は勝てると思うが、決して楽な戦いではなく、多くの困難や被害を伴う勝負になると考えている。

一部の日本人がトランプ大統領に「中国を倒してくれる」という過大な期待をしていたことは、裏を返すと日本人が自国に自信がないこと、あるいは自ら努力することを諦めている証拠でもある、と言えなくもない。

自助努力ではなく、同盟国とはいえ他国の首脳に日本の最大の脅威を退けてもらうという他力本願の思考は、自信もしくは努力する意思のいずれかの欠如を意味している。

たしかに実際、トランプ政権の誕生は日本にとって大きなチャンスだった。

トランプ政権は、同盟国に対して防衛費の増加を要求していた。この要求は、日本の国益に100%一致している。中国、ロシア、北朝鮮の脅威に晒されている日本は、一刻も早く防衛予算を増やし、防衛力を強化しなければならない。

国内世論の反発や中ロなどの妨害工作によって日本政府が防衛費増加を決断できないなか、同盟国のアメリカからの要求は絶好のチャンスだったのだ。

同盟関係の維持を理由に多くの反対論を押し切ればよかったのに、この絶好のチャンスすら日本政府は活かせなかった。

日本政府の能力が問われると同時に、日本の保守、愛国層の発言力が弱く、世の中を変えるための力がなかったと言わざるを得ない。

外圧を口実に使えなかったことを反省し、日本の保守、愛国層は自分たちの能力と発言力を高める努力をしなければならないだろう。

 

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